臨時閣議で経済対策が決定したことを受け、報道陣の取材に応じる高市早苗首相=首相官邸で2025年11月21日午後1時34分、平田明浩撮影

 政府は21日の臨時閣議で、物価高対策や投資促進策、防衛費増などを盛り込んだ経済対策を決定した。財源の裏付けとなる2025年度補正予算案に一般会計の歳出で17兆7000億円を計上する見通しで、コロナ禍後の23年度以降では最大。補正予算案とガソリン税の暫定税率廃止などの減税効果額を合わせた経済対策の規模は21兆3000億円となる。

 地方自治体や民間企業の支出分なども含めた事業規模は42兆8000億円程度を見込む。補正予算案は開会中の臨時国会に提出し、年内の成立を目指す。巨額の経済対策を巡って、市場では財政悪化懸念から長期金利の上昇や円安が進んでいるが、高市早苗首相は21日、首相官邸で記者団に対し、「日本が今行うべきことは、行き過ぎた緊縮財政により国力を衰退させることではなく、積極財政により国力を強くすることだ」と述べた。

 物価高対策では、現行の児童手当の枠組みを利用し、高校生以下の子ども1人あたり2万円を給付する。自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」に2兆円を計上。このうち食料品価格の上昇に対応する特別枠を4000億円確保し、「おこめ券」や電子クーポンなどを通じて1人当たり3000円相当を利用できるようにする。

 電気・ガス代の補助は、26年1~3月の3カ月で一般家庭で計7000円程度の負担減を図る。さらにガソリンと軽油の暫定税率の廃止で年1・5兆円、所得税がかかり始める「年収の壁」の引き上げで年1・2兆円の減税効果を見込む。

 オーバーツーリズム対策として、国内から海外に出国する際に徴収される国際観光旅客税(出国税)の引き上げについて年内に結論を得るとした。

 このほか、「危機管理投資・成長投資」促進に向け一般会計で6兆4000億円程度を計上。半導体やデータ関連のインフラ整備や、国内造船業の支援に向けた基金の創設などを盛り込んだ。防衛費増やトランプ関税の影響を受ける中小企業の資金繰り支援などには1兆7000億円をあてた。

 また、自然災害の発生やクマの被害拡大などに対応するための予備費も7000億円程度を積み増した。

 政府は今回の経済対策が実質国内総生産(GDP)を3年間で24兆円程度、年平均1・4%程度押し上げる効果があるとの試算も示した。ただ、裏付けとなる補正予算案の財源は税収増などで足りず、10兆円超の国債の追加発行を余儀なくされるとみられる。【加藤結花、神山恵】

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