NHK経営委員会(委員長=古賀信行・野村ホールディングス元会長)は8日、2026年1月24日に任期満了を迎える稲葉延雄会長(75)の後任に、副会長の井上樹彦(たつひこ)氏(68)を選出した。任期は1月25日から3年間。元日銀理事の稲葉氏まで経済界からの起用が6代続いており、NHK内部からの昇格は05~08年に会長を務めた橋本元一氏以来21年ぶりとなる。
井上氏は福岡県出身。早稲田大第1文学部卒業後、1980年にNHK入局。政治部長、編成局長などを経て、14~16年に理事を務めた。その後、子会社のNHKアイテック社長や、NHKと民放が出資する放送衛星システムの社長を歴任し、23年2月からNHK副会長を務めている。
この日の経営委員会は午前から開かれた。経営委員は12人おり、放送法で定める「会長任命に必要な9人以上の賛成」という要件を満たした。
NHK内部出身の会長を巡っては、井上氏と同じ政治部出身で97年7月に就任した海老沢勝二氏が、元チーフプロデューサーによる番組制作費詐欺事件などの不祥事を機に受信料不払いが急拡大した責任を取り、3期目途中の05年1月に辞任した。後任の橋本氏も職員のインサイダー取引事件を受け、1期目の任期満了日に引責辞任した。その後はアサヒビール相談役だった福地茂雄氏、JR東海副会長だった松本正之氏ら経済界出身者が1期で交代しながら改革を進めてきた。
1月に退任する稲葉氏は、日銀理事や事務機器大手リコーの取締役会議長などを歴任後、23年1月に会長に就いた。前田晃伸前会長が実施した組織のスリム化などの急進的な改革の「検証と発展」を掲げ、現場の声を受けて前田氏の人事制度改革などを大幅に見直した。
昨年5月にNHKの番組などのインターネット配信を放送と同じ「必須業務」にする改正放送法が成立し、今年10月に施行されたのに伴い、新しいネットサービス「NHK ONE」をスタートさせた。今年5月に初期の肺がんを公表し、治療しながら会長職を続けていた。【井上知大、諸隈美紗稀、平本絢子】
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