報道公開されたダイハツ工業のパーソナルモビリティ「e-SNEAKER」(25日、大阪府池田市)

ダイハツ工業は25日、電動車イスの販売を始めたと発表した。大阪・関西万博の来場者向けに提供している「e-SNEAKER(イー・スニーカー)」を、一般向けに販売する。公共交通機関の減少や高齢者の免許返納が増加する中、近距離の移動を支援し外出しやすい環境づくりを後押しする。

イー・スニーカーは家庭で充電できる脱着式の軽量バッテリーを搭載した歩道専用の四輪車。約2時間30分でフル充電でき、約12キロメートルの連続走行が可能だ。最高時速は6キロメートルだが、道路交通法上は歩行者の扱いになるため免許なしで乗れる。最大7.5センチメートルの段差に加え、一般的なショッピングモールの立体駐車場の坂道に相当する傾斜10度まで走行することができる。

価格は41万8000円で、年間販売目標は500台に設定した。本社工場第2地区(大阪府池田市)で生産する。シニア層が買い物など近距離の外出時に使うほか、将来的には商業施設やテーマパークの運営者が施設内で貸し出すといった使い方も想定する。

ダイハツの電動車イスの特徴はタイヤだ。電動車イスではウレタンなどを充塡するものが一般的だが、空気を入れるエアータイヤを採用した。前輪を大きくすることで走行の安定性を高めた。空気の補充は自転車用の空気入れでできる。

電動車イスはスズキやトヨタも手掛けており、ダイハツは後発になる。同日に大阪府池田市の本社で開いた発表会で、井上雅宏社長は差別化について「昔から発売されているシニア向けのものはたくさんあるが、エアータイヤなので乗り心地がいい」と強調。「歩道がでこぼこしていても軽快に走行できる」と訴えた。

ダイハツ工業が発表したパーソナルモビリティ「e-SNEAKER」と同社の井上社長(右)=25日、大阪府池田市

ダイハツは大阪・関西万博に同型の電動車イスを150台提供している。万博は実証実験との位置づけで、最大時速は4キロメートルにするなど市場投入する製品とは仕様が異なる。同社で万博関連事業を担当する主査の北野恵睦氏は「高齢者だけでなく子どもや学生など幅広い層に人気だ」と話す。会場内では7月末時点で計約2万人が利用したという。

ダイハツは同日、イー・スニーカーの生産工場を報道陣に公開した。多様な人材が柔軟に働くことができる「人にやさしい工場」をコンセプトにしており、人員計7人のうち知的障害者が2人働いている。

報道公開されたダイハツ工業のパーソナルモビリティ「e-SNEAKER」の組み立て工程(25日、大阪府池田市)

工場内には空調を整備し、夏場は冷たい風が工場全体に広がる。部品を組み付ける工程ではイスに座りながら作業ができるようにした。部品を収納する棚の高さを通常の1.5メートルから1メートルにすることで、どこにいても作業者の様子が見えるほか、車イスの社員も作業がしやすいようにした。

モニターに作業の手順を示すことでいつでも工程を確認できる工夫も凝らした。福嶋洋工場長は「多様な人材が働ける『ユニバーサルライン』を目指しており、ここでの事例を他の工場に展開できないかも検討していきたい」と話す。

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