東京都中小企業振興公社主催の海外展開シンポジウムでは、日タイの大手企業幹部らによるパネル討論も行った(12日、東京都千代田区)

東京都中小企業振興公社は12日、バイオエコノミーをテーマにタイでの事業の魅力を伝える「海外展開シンポジウム」を東京都内で開いた。タイ工業省のパッサコーン・チャイラット副事務次官が基調講演し、第2部のパネルディスカッションではチャイラット氏に加え、タイで事業展開する日本、タイの大手企業幹部らが食品・バイオ産業の現状や今後の方向性について議論した。

冒頭、同公社の中西充理事長が「日本企業にとってタイはグローバルサプライチェーンの重要拠点であり続けている。両国の協力関係をさらに深め、具体的なビジネス連携へとつながることを心より期待している」と挨拶した。

基調講演では「タイ製造業の変革期 日本企業の貢献を期待するタイ政府のビジョン」をテーマに、チャイラット氏が現在のタイの経済・市場状況やタイ政府の産業政策の方向性と課題、技術連携や投資などで日本企業に期待することなどを説明した。

チャイラット氏はタイの次世代産業の方向性について、①(バイオ技術などで循環型社会を実現する)バイオエコノミー②ヘルスケア・医療産業③農業・食品④防衛産業⑤バイオ・サーキュラー・グリーン(BCG)産業――の5つを列挙。「日本の中小企業と一緒に取り組んでいきたい産業分野だ」と指摘した。

タイ国内で展開するサトウキビやキャッサバを原料としたバイオプラスチック事業などの事例も紹介。バイオマス資源の豊富さをアピールし「日本人は環境を大切にする価値観を持ち、それを実現させるテクノロジーがある。日タイで連携したい」と強調した。

パネルディスカッションにはタイで事業展開する化学メーカーのダイセルの山田良平執行役員、タイ製糖会社で世界でも大手のミトポン・シュガーのパッサコーン・シーサートラ副社長、経済産業省出身でタイの政府政策顧問を務めた松島大輔・金沢大学教授が登壇し、タイの地域資源や日本企業との連携の可能性などについて意見を交わした。

シーサートラ氏はミトポンがバイオマス発電やバイオエタノール事業など非製糖事業に注力してきた歴史を紹介したうえで「今後は(バイオや医薬品など)付加価値の高い商品を市場に提供するため、国内外の(先端)技術を保持する企業とオープンな場所でともに研究開発している。日系企業にも参加してほしい」と呼びかけた。

タイでの勤務経験がある山田氏は「タイは多様な文化や先進技術を受け入れやすい国民性があり、日本は高度な製造技術・品質維持のノウハウを持つ。バイオ産業分野でも連携の可能性が広がる」などと話した。

松島氏は「(国内での)本業に加えて(海外進出など)新しい事業展開を見つけていく『両利きの経営』が、将来の若い世代もひき付けていく」と訴えた。(飯塚遼)

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