日銀が15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が、大企業・製造業で前回の9月調査(プラス14)から1ポイント改善のプラス15だった。3四半期連続の改善で、2021年12月以来4年ぶりの高水準となった。トランプ米政権の大規模関税の影響が「当初の想定より小さい」と判断する企業が増えた。日銀は18、19日の金融政策決定会合で政策金利を引き上げる方針で、その判断を後押しする内容となった。
大企業・製造業のDIは、全16業種のうち9業種が改善した。トランプ関税への懸念が後退したことを背景に、石油・石炭製品が33ポイント改善のプラス33だった。人工知能(AI)ブームで半導体需要が強まっている化学も7ポイント改善のプラス22だった。
自動車はトランプ関税の影響が残り、1ポイント悪化のプラス9だった。ただ、今後は「関税コストを米国での販売価格に転嫁することで業績が改善する」との見方が出ている。
大企業・非製造業のDIは、9月調査から横ばいのプラス34で、全12業種のうち改善したのは3業種にとどまった。
人件費や原材料費の高騰を販売価格に転嫁したことで、運輸・郵便が1ポイント上昇のプラス27だった。一方、宿泊・飲食サービスは1ポイント悪化のプラス25だった。物価高による節約意識の高まりが重しとなった。
日中関係の悪化を受けたインバウンド(訪日外国人)減少への懸念が広がり、3カ月先DIは、小売りや宿泊・飲食サービス、不動産で悪化した。
雇用が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いた雇用判断DIは、全規模・全産業で2ポイント悪化のマイナス38。1991年以来の水準で、人手不足が深刻化する実態が改めて浮き彫りになった。
一方、日銀は同日、来春の企業の賃上げ動向に関する本店と全国32支店の聞き取り調査の結果を公表。25年度と比べて「横ばい」「上回る」との回答が計31店と大半を占めた。日銀は利上げの是非を判断するうえで、26年度春闘でも十分な賃上げが続くかどうかを重視している。【古屋敷尚子】
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