
京都大学などは15日、臍帯(さいたい、へその緒)を使って傷ついた神経を再生する医師主導の臨床試験(治験)を2026年1月から始めると発表した。臍帯に含まれる細胞から、立体的な組織をつくる「バイオ3Dプリンター」で管状の組織を作製し、損傷部に移植する。失った組織を再生させる新たな治療法として早期の実用化を目指す。
手の指の神経は事故で損傷することがある。損傷した神経の先端同士を縫合できない場合、健常な部分の神経を採取して損傷部に移植する治療法が主流だった。
今回の治験は、東京大学医科学研究所付属病院臍帯血(さいたいけつ)・臍帯バンクで開発された健康な第三者の臍帯由来の間葉系の細胞を活用する。臍帯由来の細胞は免疫反応を起こしにくいとされる。

バイオ3Dプリンターを手掛けるサイフューズと協力し、間葉系の細胞から損傷した神経の隙間を埋める管状の「神経導管」を製造する。損傷部に移植することで、神経を再生する。手の指の神経が断裂、または欠損した患者を対象に神経導管を移植する。移植後36週間の観察で、安全性や有効性を確認する計画だ。
京大などは患者の皮膚から神経導管を作製し、移植する医師主導治験を実施してきた。ただ皮膚から細胞を採取し、神経導管を作製するまでに時間がかかるという課題があった。第三者の細胞を活用できれば、治療までの時間を短縮できる可能性がある。京大病院の池口良輔教授は「(自己移植ができず)神経の再生を諦めざるを得なかった場合でも再生できる可能性がある」と話す。
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