高額療養費制度を巡っては患者団体が低所得層への配慮を求めていた

厚生労働省は高額療養費の年4回目以降の負担限度額を抑える「多数回該当」に関し、年収200万円未満の場合は負担上限を引き下げる。がんや難病など長期の療養が必要な患者の負担増を避ける。ほかの所得層は現行の上限額を据え置く。患者団体が低所得層への配慮を求めていた。

15日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の専門委員会でとりまとめ案を大筋で了承した。2026年度予算案の編成過程で制度改正の詳細を固める。26年夏以降に順次施行する方針だ。石破茂前政権が24年末に示した改革案からは後退するものの、支払い能力のある人が負担する制度に一歩近づく。

医療費の患者負担を一定額に抑える高額療養費制度には、月の支払い上限額に年3回達した場合に4回目以降の限度額を下げる仕組みがあり、多数回該当と呼ぶ。

例えば70歳未満で年収が約370万円未満だと、月5万7600円の限度額がある。4回目以降は上限が4万4400円に下がる。ほかの所得層の限度額は原則据え置いた上で、住民税を課税される人で年収200万円未満の層は限度額を下げる。

1〜3カ月目までの上限額は2段階で見直す。現在は主に5つの所得区分によって限度額が異なる。まず1人あたりの医療費の伸びなどをふまえ、一律で引き上げる。その後に住民税非課税の人を除き、それぞれを3つに細分化し、将来は計13の区分に変える。

毎月の限度額を引き上げると、上限額に達する月の回数が減り、多数回該当の要件から外れる人が増える可能性がある。急激な負担増を抑えるため、新たに「年間上限」を導入する。「患者本人からの申し出を前提とした運用で開始」するとした。とりまとめの素案で、月額上限に年1回以上該当した人が対象としていた要件は削除した。

70歳以上の一部を対象に外来受診の月の負担上限を定める外来特例については、住民税を課税されず年収がおよそ80万円未満の人は現行の月8000円の上限額を据え置く。

その他の層は外来医療費の伸びなどを考慮して見直す。対象年齢の引き上げも検討する。

石破前政権は24年末に高額療養費制度の段階的な負担増の案を示した。多数回該当の限度額引き上げを中心に患者団体などの反発を招き、全面的に実施を見送った。

【関連記事】

  • ・高額療養費は患者の負担抑制こそ真の課題 安藤道人氏
  • ・高額療養費、生みの親は田中角栄 費用対効果が改革の鍵
  • ・高額療養費、仕組みを知る 年齢・年収で負担に上限

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。