経済産業省は19日、2026年度の二酸化炭素(CO2)排出量取引の価格について1トンあたり上限4300円、下限1700円に設定した。今後、毎年引き上げる。取引開始は27年秋の予定で実際の取引はまだ生じない。価格を先に示すことで企業に取引を念頭に置いた脱炭素投資を促す。

排出枠の取引市場はGX推進機構が開設する。国が排出量の多い企業に排出枠を割り当てる。枠を上回る排出をする場合、市場を通じて他社から余った枠を購入する。

取引価格は市場で決めるものの、極端な高騰や下落を防ぐために上限と下限を設ける。価格が高すぎる場合、企業が日本での事業活動を諦めて海外に流出するリスクがある。低すぎると脱炭素投資をせずに市場で排出枠を調達する企業が増えてしまう。

上限は火力発電を石炭から液化天然ガス(LNG)に切り替えるコストを参考にした。下限は東京証券取引所カーボン・クレジット市場で省エネによる排出削減量を「J-クレジット」として売買する価格を参照した。上下限は物価上昇率に3%上乗せして毎年引き上げる。

26年度は対象企業が自社の排出量を測定する期間とし、市場開設に向けた準備を進める。開設日や参加者の要件、取引の手続きといった詳細は引き続き検討する。

排出量取引はCO2排出量が年10万トン以上の300〜400社が対象となる。日本製鉄やトヨタ自動車、JERAなどが入り、合計すると国内のCO2排出の6割ほどを占める。業界ごとの基準に沿って排出枠を毎年度割り当てる。

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