記者会見に臨む日銀の植田和男総裁=東京都中央区で2025年12月19日午後3時34分、藤井達也撮影

 日銀は19日、政策金利を現行の0・5%程度から0・75%程度に引き上げると決めた。利上げは今年1月以来7会合ぶり。トランプ米政権の大規模関税の日本経済への打撃が当初の想定より小さく、企業が来年の春闘で十分な賃上げをすると判断した。日銀は2026年以降も経済情勢を見極めながら、慎重に利上げを続ける方針。

 18、19日に金融政策会合を開き、9人の政策委員が全会一致で決めた。政策金利が0・75%に達するのは、1995年(当時は公定歩合)以来で、約30年ぶりの高水準となる。

 日銀の利上げ決定後、国債市場で長期金利の指標である新発10年債の利回りが上昇(価格は下落)して節目の2%を突破。約26年ぶりに2・02%をつけた。

 会合後に記者会見した植田和男総裁は「来年は今年に続き、しっかりした賃上げが実施される可能性が高い。米国経済を巡る不確実性は低下している」と強調。トランプ関税による経済の先行きリスクが低下し、十分な勢いの賃上げが続くとの見方を示した。そのうえで「経済・物価情勢を踏まえ、金融緩和の度合いを調整することが適切と判断した」と、追加利上げを決めた理由を述べた。

 植田氏は「複数の委員が『最近の円安が国内価格に影響を与えている。そこも見ていかないといけない』と指摘した」と述べ、急速に円安が進み物価高(インフレ)を助長していることも利上げの判断材料になったと示唆した。

 また「政策金利の変更後も、緩和的な金融環境は維持される」と述べ、今回の利上げ後もなお金融緩和の状態が続いていると明言。「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する」と述べ、経済情勢を見極めつつ利上げを慎重に続ける姿勢を示した。

 植田氏の会見後、外国為替市場では一時1ドル=157円台まで円安・ドル高が進んだ。市場では「積極的な利上げを目指す『タカ』派的な発言がなかったため」との見方が出ている。

 日銀は24年3月にマイナス金利を解除して以降、3回の利上げを実施。その後、トランプ関税の影響を見極めるため6会合連続で金利を据え置いてきた。

 利上げに伴い住宅ローンの変動金利や企業向けローンの金利は上昇する。一方、家計や企業の預貯金の利息が増えるメリットもある。【古屋敷尚子、大久保渉】

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