高島屋は従業員らの生活に配慮し1月2日も休業にしている(京都市の店舗)

百貨店などの小売業で年始の休みを増やす動きが相次いでいる。仕事と生活のバランスを重視する価値観が広がるなか、正月に家族と過ごしやすい職場環境にして、優れた人材を集める狙いがある。

しっかりと休むことで接客などの仕事にも集中でき、労働生産性の向上も期待できる。消費者の側も便利さを求めるだけでなく従業員の状況にも心を配ることで、社会全体として消費活動と働きやすさを両立させていくべきだ。

2025年は6店舗で元日営業をしていたそごう・西武が、26年は全10店舗で初売りを2日にする。主要百貨店の26年の初売りは2日や3日でばらつきがあるが、元日はそろって休業となる。

高島屋は今年、23年ぶりに2日も休業にした。社員や店舗で働く取引先の従業員から歓迎され、業績にも大きな影響がなかったことから26年も初売りを3日にする。

かつて小売業は正月三が日を休むのが一般的だった。90年代に大手スーパーが元日営業を拡大し、他の小売店にも波及していった。デフレ経済下で売り上げを確保する狙いがあったが、少しでも営業の日数や時間を増やそうという経営姿勢が小売りやサービス業などで海外に見劣りする労働生産性の改善を妨げてきた面がある。

人手に頼る売り上げの拡大は今後さらに難しくなる。労働政策研究・研修機構によると、労働力人口は2022年の6902万人から40年に向けて最大で900万人減ると見込まれる。

「24時間年中無休」が原則のコンビニエンスストアも時代に合わせた運営を柔軟に考える必要があろう。すでに人口減が顕著な北海道が地盤のセコマ(札幌市)では約1200店のうち24時間営業しているのは1割にとどまる。元日は4割の店が休業する予定だ。

営業時間を絞ってもサービスや商品の付加価値を高めて顧客に支持されれば、消費や経済は縮小均衡にならず成長の道は開ける。顧客と働き手の双方から選ばれる会社になることが欠かせない。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。