兵庫県尼崎市が2025年秋、市民全世帯に配布した「おこめ券」の見本=同市提供

 兵庫県内の自治体が政府の補正予算に盛り込まれた食料品高騰対策の交付金などを使った事業を次々と決めている。人口10万人以上の主要10市への取材では尼崎、西宮、川西市の3市は「おこめ券」を配布する一方、姫路、宝塚など5市は商品券やギフトカードなどで対応。三田市は現金を給付する。神戸市は検討中だが、政府が推奨する「おこめ券」は少数派となっている。

 政府の補正予算では自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」に2兆円を計上。うち食料品価格の上昇に対応する特別枠を4000億円設けている。特別枠以外でも水道料金減免や学校給食支援などのメニューがあり、自治体は今後、各種支援策を打ち出す見込みだ。

おこめ券派

 交付金を使った事業に、おこめ券を含めている3市のうち、尼崎市は今秋にも1世帯2200円分を独自に配った=写真、同市提供。今回は1人当たり3080円分を全市民に配布。2026年3月中旬以降、順次発送を予定している。同市は「前回も市民に喜んでいただいた。一度配布しているので市民に迅速に届けられる」と説明する。

 西宮市は全世帯に1世帯につき4400円分の「おこめ券」を交付する。26年2月ごろから発送を始める予定だ。川西市は全市民に1人当たり4840円分の「おこめ券」を配る。26年3月末以降、順次配布する予定という。

商品券派

 一方、姫路市は全市民に1人5000円分のプリペイド型のギフトカードを発送する。26年4月以降に送付し、使用期間を同年12月とする方針だ。同市は「使える範囲が広い。振込先確認で時間がかかる現金給付などに比べ、速やかに配布できる」と話す。

 宝塚市は全市民に1人3000円分の商品券を準備する。65歳以上には3000円、住民税非課税世帯員(65歳未満)には1000円をそれぞれ加算し、26年4月以降の送付を予定する。

 伊丹市は、全市民を対象に1人当たり6000円分のプリペイド式カードを配布。「バニラVisaギフトカード」で、「Visa」加盟店で利用できる。世帯人数分の金額を1枚にまとめて、26年2月中に世帯主宛てに簡易書留などで郵送する予定という。

 加古川市は全市民に1人5000円相当のデジタルポイントか商品カタログを配布する。26年4月中旬以降、QRコードを記載した通知書を郵送し、各自でサイトにアクセスして選ぶ。ポイントの種類やカタログの内容は未定だ。

三田市は現金

 三田市は市民1人につき5000円を給付する。2月中旬~下旬以降に世帯ごとに口座に振り込む予定だ。市によると商品券を取り扱う会社には自治体から注文が殺到しているといい、田村克也市長は「現金の方が事務費が安く、給付時期の予定を立てやすい」と説明した。

 県はプレミアム付きデジタル商品券「はばタンPay+(プラス)」を追加発行する。プレミアム率を過去最大の50%とした一方、全員が最大4口を購入した場合、利用できるのは県民の17・5%の93万人にとどまる。斎藤元彦知事は「場合によっては予算の追加も視野に入れる」としている。

給食に活用も 明石市、神戸市

 物価高騰対策では多くの市が知恵を絞る。

 明石市は交付金を活用し、国が26年4月から予定する小学校給食無償化を2月に前倒しして実施する方針だ。事業費1億3500万円を25年度補正予算案に盛り込んだ。

 食料品高騰対策では、50%のプレミアム付き商品券「あかしタコPay」発行に4億7060万円を計上した。おこめ券は実施しない方針だ。市の試算では配送や手数料で1億円超かかるとし、丸谷聡子市長は「タウンミーティングに参加した市民全員が『要らない』という意見だった」と話した。

 神戸市は交付金を中学校での給食食材費の高騰対策などに充てる。おこめ券や商品券などを配布するかは未定で、市財務課は「県がはばタンペイで一定の物価高対策をしているので、市として検討する時間をもらいたい」と説明する。

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