野村ホールディングスは野村証券として創業して100周年になる

野村ホールディングスが野村証券として創業してから100周年を迎えた。変化の激しい金融ビジネスで世界のリスクマネーに深く関わり、存在感を高められるか。真価が問われている。

野村の足取りは日本の資本市場の浮沈と重なってきた。1980年代の絶頂期は日本一の経常利益を上げた。しかしバブルが崩壊。株式手数料に依存したモデルからの脱却が積年の課題だった。

2025年3月期の純利益が19年ぶりに過去最高となったのは、米国の法人部門のほか顧客の預かり資産から収益を上げる構造へ転換が進んだからだ。ただ世界の競合相手との差は歴然としている。時価総額でみても約140兆円ある米JPモルガン・チェースに対し、野村は4兆円にとどまる。

野村に求められるのは世界市場で挑み続ける姿勢だ。豪マッコーリー・グループ傘下にあった米資産運用会社の買収は新たな足がかりになる。収益の柱を世界で太くできるか否かの試金石となる。

日本も「貯蓄から投資」の流れが動き出し、直接金融の担い手として証券会社の役目は重みを増す。古い資本構造を企業が組み替え、M&A(合併・買収)といった取り組みも強まってきた。

家計でも資産運用に関心が高まる。健全かつ持続的に富が増える循環を生み出してこそ市場のリスクマネーも厚くなる。短期収益に目を奪われ、顧客の長期の利益に背くことがあってはなるまい。

人工知能(AI)の活用は必須だ。市場分析から顧客ごとの個別サービスまで米金融大手は年間数兆円規模の資金を投じる。野村もインドを拠点に力を入れるが、後れをとれば差は広がりかねない。

金融の境界は崩れ、新領域に挑む機動性と同時にリスク管理能力が問われる。各社が傾斜するプライベート(未公開)資産にリスクが潜んでいないかは気がかりだ。

過去の野村は強い営業力と裏腹に不祥事を繰り返してきた。金融の根幹が顧客からの信頼に尽きるのはいうまでもない。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。