「お伝えした人数の派遣をお願いします」
ある食品関連会社の社員はこう迫られた。相手は取引先の食品スーパー「ロピア」で仕入れの権限などを持ち、「バイヤー」と呼ばれる立場の人物だった。
「求められた人数をそろえられません」と答える社員に対し、バイヤーは、従業員をロピアの店舗に派遣するよう、繰り返し要請したという。
ロピアを巡っては、新規店舗の開店などに際し取引先に無償で従業員を派遣させ、商品陳列や品出しといった作業をさせていた問題が発覚。公正取引委員会は、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」の疑いがあるとの判断を示した。
関係者によると、ロピアのバイヤーは新店舗の開店1カ月前ごろから、食品メーカーや食品卸会社など取引先の担当者らに電話やメールで派遣を求め、対面時には直接持ちかけた。半ば強制的な言い方も横行していたとされ、派遣人数を具体的に指示することもあれば、「オープンの日が決まったので、よろしくお願いしますね」とだけ伝えることもあった。要請を受けた会社は類似商品を扱う他社にも声を掛けるなど、要員確保に奔走した。
ロピアの新規店舗は「目玉商品」が準備されるなどすることから、多くの買い物客が訪れる。このため店側には、商品の補充が遅れれば貴重な販売機会を逸するといった懸念があり、重点的に派遣を要請していたという。
一方、派遣する側は、ロピアへの依存から要請を断りづらかったほか、要請に従っても他社商品の品出しを強いられることもあり、「取引先の社員ではなく、単に作業員として扱われた」などと不満がくすぶったとされる。
食品スーパー業界などでは商習慣を改めようと、従業員を派遣した側が費用を店側に請求する仕組みを整えている会社が増えている。ただしロピアはそうではなく、公取委の担当者は「取引先への派遣要請は無償を前提とする全社的な行為だった」と指摘した。【山田豊】
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