
国立成育医療研究センターなどは、小児がんに対して関連する複数の遺伝子を網羅的に調べる「がん遺伝子パネル検査」が有用であるという研究結果を発表した。研究に参加した約200人の小児がん患者の7割で、診断や治療などの有用な情報が得られたという。
パネル検査はがんに関係する遺伝子を数十〜数百種類調べることができる。ただ、基本的に成人のがんを対象として設計されており、従来の検査方法では、成人と異なる小児がんの特徴的な遺伝子の変化を捉えられないこともあるため、得られる情報が限られていた。
研究チームは、日本小児がん研究グループ(JCCG)に参加する全国の50カ所の小児がん診療施設の協力を得て、29歳以下のがん患者を対象に約1年にわたって多施設共同臨床研究を行った。研究には東京大学などが開発した小児がんに特徴的な遺伝子も含めて調べられるパネル検査システムを使い、解析結果を専門家で議論して評価した。
がん細胞と血液の検体がそろった約200人の患者のうち、147人(72%)で「臨床的に有用な所見」が見つかった。臨床的に有用な所見は①診断に役立つか②病気の経過や再発のしやすさに関する情報が得られるか③治療薬の選択に役立つかの3つで評価した。
ただ小児がんのパネル検査の結果を解釈できる専門家の数は全国でも限られている。国立成育医療研究センターの加藤元博・がんゲノム診療科診療部長は「小児がん治療に適したパネル検査を有効活用できるようにするため、専門家の人材育成などにも力を入れたい」と話す。
研究成果をまとめた論文は日本の学術誌「キャンサー・サイエンス」に掲載された。
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