
医療機器大手のニプロは2027年度までに、タイ工場(アユタヤ県)で生産する透析治療用血液回路の品数を約9割削減する。手作業中心だった組み立て工程を自動化することで、同工場の製造人員の半数にあたる約3500人の削減が可能になる。生産効率化を進めるほか、現地の人件費上昇や単純な組み立て作業を担う人材の減少に対応する。現地は雇用の流動性が高く人員縮小は自然減が中心となる見通し。
ニプロの山崎剛司社長が、日本経済新聞の取材に対し明らかにした。山崎社長は「製品の棚卸しと統合は営業利益に直結する非常に重要な施策」と強調する。同社は31年3月期に営業利益率9%(2025年3月期は4%)を目指している。血液回路を含む透析関連製品の売上高は25年3月期には約2000億円と全体の3割を占める。
生産自動化の前提となる標準化を進めるため、血液回路の品数を現在の約1330から90へ絞り込む。血液回路では、チューブの長さや付属部品の形状・点数が異なり、医療現場での要望に個別対応した結果、品番が増え、工程の多くが手作業にとどまっていた。タイ工場は製造員が約7000人とグループ最大で、血液回路の生産に関わる人員が半分超を占める。

標準化した仕様に合わせた生産設備を協力会社と開発して組み立てを自動化する。全体の生産量は維持する考えだ。今後、製造機械はベトナム工場にも導入を予定する。
自動化で生まれるスペースは新製品の生産ライン設置などに充てる方針で、「これまでは増産のたびに新しい工場が必要だったが、既存拠点の中で拡張余地が出る」(同社)という。
血液回路の需要は透析患者数の推移に概ね連動しており、今後も世界的な需要増を見込む。需要を取り込みながら利益率を引き上げるには、品番整理による標準化と自動化でコスト構造を変えることが欠かせないと判断した。ニプロは点滴に使う注射針でも2025年にタイやインドネシア、ブラジルの工場で自動化を進め、3割の増産を計画する。
大規模な生産体制見直しの背景には低い資本効率がある。直近5年間で新工場建設など4000億円の設備投資を行った一方、営業利益は170億〜280億円台で推移する。ROE(自己資本利益率)も低調で、25年3月期は2.1%にとどまった。カテーテルや人工心肺装置などが強みのテルモ(8.7%)や血液成分測定装置のシスメックス(12%)との差は大きい。

資本効率の改善に向け、ニプロは28〜30年度の次期中期経営計画で、新たにROICを経営指標として採用する方針だ。同社の余語岳仁専務取締役は「30年度には9%後半を目指したい」と話す。低採算の後発薬事業でも、品番の整理や他社との協業を進め、投資回収を急ぐ。
(竹内なな子)
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