中部電力は5日、浜岡原発3、4号機(静岡県御前崎市)の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査で、耐震設計などのもとになる基準地震動を恣意(しい)的に選定し、過小評価する不適切行為をした疑いがあると発表した。規制委は昨年12月19日から審査を中断しており、再稼働の大幅な遅れは必至の状況となった。林欣吾社長は5日に臨時記者会見を開き「審査に重大な影響を与え、信頼を失墜させる恐れがある」と陳謝し、第三者委員会を設置して調査する方針を明らかにした。
中部電によると基準地震動の設定に際し、本来は御前崎沖の断層帯で起こる地震などについて、それぞれ20通りの地震動のグラフを作成し、その中から平均に最も近い波を「代表波」とする予定だった。しかし同社は数千通りの地震動を作成し、意図的に代表波を選んだ上、20通りの平均に近いものになるよう残り19の地震動を選び、グラフを作成していた。
また本来は20通りの地震動の1セットから代表波を選ぶが、100セットを作成し、代表波を選んでいたケースもあった。複数の断層で多数の行為があったという。社内での聞き取りでは「意図的に選定し、地震動を過小評価していた」との回答もあった。
地震動は外部の委託先が同社の指示を受けて計算し、中部電が選定した。不適切行為は社内の原子力部門の数人で行われたとみられ、意図や組織的な関与などは第三者委で今後調べる。社内で問題を指摘する声もあったという。
中部電は2014~15年に浜岡原発の審査を申請し、49の基準地震動が23年9月に規制委で認められた。最大加速度1200ガルとなる基準地震動の一つは別の評価手法だが、45の地震動が今回の不正が疑われる評価手法に基づくもので、耐震設計に大幅に影響する可能性がある。
原子力規制庁によると、25年2月に外部から「審査会合で説明した内容と異なる恣意的な操作が行われている」と情報提供があり、中部電に調査を依頼した。中部電が25年12月に規制庁に不適切行為を報告し、山中伸介規制委員長が審査の一時中止を決めた。
規制庁の担当者は「基準地震動は施設の耐震性確保の上で最も重要な審査項目。不正行為は誠に遺憾で、中部電がやっているすべてのことについて疑義が生じかねない」としている。7日の規制委定例会で対応を議論する。経済産業省も5日、同社に対して電気事業法に基づく報告を求めた。
浜岡原発1、2号機は09年に停止し、廃炉手続き中。11年5月には、南海トラフ地震の想定震源域の直上に立地することから菅直人首相(当時)の要請で、3~5号機の運転を停止した。14年に4号機、15年に3号機の安全審査を申請していた。【木許はるみ、道下寛子】
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