
三井不動産は27日、名古屋市港区の再開発地区「みなとアクルス」で「(仮称)名古屋アリーナ」を着工したと正式発表した。三井不動産や東邦ガスが手掛けてきたみなとアクルス第2期開発工事の中核施設となる。27年秋に竣工し、28年初めに開業する見込み。隣接する商業施設との回遊性を高め、みなとアクルス地区の活性化を狙う。
アリーナの収容人数は約1万人で、名古屋市中心部の施設としては7月に開業したIGアリーナ(約1万7000人)に次ぐ規模となる。延べ床面積は約2万7500平方メートルで地上4階建てとなる見込み。設計・施工は大林組が担う。

新アリーナは27〜28年シーズンから、豊田通商が母体のバスケ男子Bリーグ1部(B1)チーム「ファイティングイーグルス名古屋」のホームアリーナになる予定だ。新アリーナにはKDDIも運営主体として参画し、イベントにおける通信分野などで協力する方針という。
名古屋には1万人規模の観客を収容できるイベント会場が少なく、集客力のあるコンサートやスポーツイベントが東京や大阪に流れる「名古屋飛ばし」の一因となっていた。新アリーナの完成で規模の異なるイベント会場が名古屋にそろい、興行を呼び込みやすい環境が整う。

三井不動産にとっても新アリーナの戦略的意義は大きい。24年にアリーナ会場「ららアリーナ東京ベイ」(千葉県船橋市)を開業しており、名古屋市の新アリーナはこれに続く2件目のアリーナとなる。
狙いは三井不動産グループが運営する他の商業施設との相乗効果だ。アリーナを訪れる観客が、試合やイベントの前後に近隣の商業施設を回遊する効果が期待できる。
三井不動産の植田俊社長は日本経済新聞のインタビューに対し、「アリーナと商業の一体運営はひとつのモデルになる」と語った。ららアリーナ東京ベイでイベントがある日は、隣接するららぽーとの来館者が30%増えたという。
同様の効果がみなとアクルスでも期待できる。3月にはららポート名古屋みなとアクルスを改装し、中心部にデジタルサイネージ(電子看板)を設置した。アリーナなどで開かれるイベント情報を電子看板で流せば、イベントの集客力が高まるほか商業施設への誘客にもつながるとみる。
東邦ガスの工場跡地を活用し、効率的なエネルギー配分を目指すモデル地区と位置づけられている「みなとアクルス」は、15年から第1期の開発工事が始まった。18年には名古屋初進出となる、ららぽーと名古屋みなとアクルスが開業。その後、第2期開発の検討が進められ、先行する形で今年3月にライブハウスが開業した。
第2期工事の中核となる新アリーナの開業が正式発表されたことで、みなとアクルス地区で開発用地として残っているのは、建設中のマンションと新アリーナの間の土地のみとなった。
東邦ガスはみなとアクルスで子ども向け職業体験施設「キッザニア」を誘致する方針だったが、建設費や人件費の高騰で断念した。最後に残った開発用地で新アリーナとの回遊が期待できる施設をどう計画するか、注目が集まっている。
(川路洋助)
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