買収の概要を説明するテルモの鮫島光社長CEO(27日午後、東京・港)

テルモの鮫島光社長最高経営責任者(CEO)は27日、約15億ドル(約2200億円)を投じる英オルガノックス買収についての記者説明会を開き、「(同社が手がける)臓器移植関連事業を10年で1000億円に成長させる」と話した。2030年までに新製品も投入し、現在の連結売上収益(国際会計基準)の1割にあたる収益源を立ち上げる。

オルガノックスは移植用臓器を常温で保存しながら輸送する機器「臓器保存デバイス」を手がける。現在は米国や欧州などで肝臓用を販売しているが、30年までに体積を3割小型化した新製品を発売する。利便性を上げ、空路でも運びやすいよう配慮する。腎臓用の新製品も商品化し販売を始める考えだ。

臓器移植関連として目標とする1000億円は、25年3月期の連結売上収益(1兆361億円)の1割に相当する。オルガノックスの24年12月期の連結売上高は5522万ポンド(約110億円)。テルモが世界中にもつ販路を活用し、収益規模を現状の約10倍に引き上げ、同社の代表的な部門で脳血管治療を扱う「ニューロ事業」とほぼ同等に育成するという。当面は既存事業とは別の社長直轄の新規事業ユニットとして扱う。

オルガノックスの買収に踏み切った最大の理由が他社にない独自性という。市場の競争環境は激化するとしたが、鮫島氏は「常温で運ぶ点は、ほかの方法に比べて優位だ。さらに独特のアルゴリズムで臓器の状態をリアルタイムで測る技術は、他社が追随するのは難しいだろう」と話した。

テルモは心臓の手術に必要な人工心肺や新型コロナウイルス感染症の治療に使われるエクモ(体外式膜型人工肺)を扱っている。鮫島氏は「体外で血液の循環や温度を管理して臓器の機能を支える技術と非常に近い。両社の技術を組み合わせることで、より高度化させられる」と話した。

鮫島氏は「買収先を選ぶ際に重要な技術の革新性や競争優位性、成長性などすべてのクライテリア(評価基準)を完全に満たした」と話した。その上で「後年振り返ったときに必ず、見事だったと評価してもらえると確信している」と自信を見せた。

(前田悠太)

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