販売戦略のワークショップを受けるまいばら農業塾の塾生ら=滋賀県米原市提供

 滋賀県米原市が新規就農を検討する人に開く「まいばら農業塾」に50代の毎日新聞記者が入塾した。塾での体験を伝える連載「おいちゃん記者、鍬(くわ)を持つ」の12回目。【長谷川隆広】

 冬季のまいばら農業塾は座学が中心だ。栽培実習がないのはつまらない、なんて思っていたけれど、いやいやどうして、座学も結構おもしろい。「販売戦略(販路)について」と題した講座は興味深かった。丹精込めて作った野菜、誰かに食べてもらってこそ。まして、それを買ってもらえるのなら……。その喜びは11月の販売実習で経験済み。また、あの喜びを味わいたい。

 農業塾に入ってから、道の駅の産直コーナーでの買い物が楽しい。どんな種類の野菜があるのか、出来具合はどうか。大きさや色、形は。値段もしっかりチェック。「この野菜はよく売れているんだなあ」「あれ? 意外に小さいうちに収穫するんだ」「こんな安い値段でもうけが出るの?」と、あれこれ考える。ラベルにある栽培者名にも注目だ。いわば「お手本」となる先輩農家だから。

 ついつい「市場調査」をしてしまう私に、講座内容は打ってつけだった。デザイン会社「ゴチャトレーディング」(米原市梅ケ原)代表の立澤竜也さん(49)が講師役。道の駅に並んでいる菓子、みそなどのパッケージデザインも手掛ける会社だそうだ。

 講座ではまず「月3万円の売り上げ」を目標に、「売れるための小さな工夫」を学んだ。簡単に販売を始めるには道の駅が一番、と立澤さん。ライバルが多く、価格競争が激しいという注釈付きだけど。確かにベテラン農家の安い野菜がずらっと並ぶ。じゃあ、どうすれば? 立澤さんの答えは「ファンを一人でも作る工夫をすること」。私のように栽培者名を見ている人は意外に多く、リピーターと口コミが鍵だとか。

 でも、リピーターと口コミを得るのが一番難しいのでは。そんな私の心中を、講師はお見通し。さっそく「戦略」を紹介してくれた。ハーブなど高単価で売れる野菜を育てる▽加工して付加価値を高める▽作付け計画をしっかり立てて継続的に出荷する▽客層の違いを考慮して出荷先を選ぶ--の四つだ。なるほど、いい野菜を作ればそれでいいというわけではないんだな。

 事業計画を立てるワークショップも。配られたのは「何を売りたい?」「どんなふうに売りたい?」「その理由は?」と書かれたワークシート。野菜をどう売るかなんて考えたこともなかった。何も思い浮かばず冷や汗が出かけた時、ふと、伊吹山のふもとでサツマイモ栽培が盛んなことを思い出した。干し芋やチップスを個別包装して、アウトドア向けの携帯食や災害時向けの非常食にしてみてはどうか。そう書いた。栽培しやすくて、加工も容易。おやつにも食事にもなる。何より私の大好物。立澤さんから「迷彩柄のパッケージで売ってみては」とアドバイスももらえた。

 これまで栽培のことしか考えてこなかったけれど、講座のおかげで新しい視点が持てた。思い返せば販売実習は採算度外視だった。売れるまで値段を下げたのだからそりゃ売れる。ただ、農業を「なりわい」として考えると「栽培」と「販売」は両輪なのかも。どちらが欠けても成り立たない。販売にも知恵を絞らなくちゃ。よし、また買い物がてら、道の駅で「お手本」を探してみよっと。【長谷川隆広】

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