IHIは26日、住友重機械工業の機械式駐車場事業を買収すると発表した。IHIが企業や事業を買収するのは約8年ぶり。IHIは収益性が低下した事業10件ほどについて過去3年の間に売却や撤退を進めてきていた。構造改革に一定のめどがついたため成長を見据えた買収戦略へと転じる。
買収するのは住友重機械子会社の住友重機械搬送システムが手掛ける機械式駐車場事業だ。IHI子会社のIHI運搬機械が事業を受け継ぐ。買収金額は非公表だが数十億円規模とみられ、11月の買収完了を目指す。
IHIではIHI運搬機械を中心に機械式駐車場の開発や生産、保守事業を手掛けている。マンションなどで使われる「タワー式」や「2段式」に強い。事業規模は約550億円で、機械式駐車場の国内市場で過去の実績を含め4割ほどのシェアを持つ。
住友重機械の機械式駐車場事業は2024年12月期の売上高が70億円だった。オフィスや商業施設の地下に車両を収納する「地下式」を得意とする。設計やメンテナンスなどに関わる従業員約90人がIHI運搬機械に移籍する。
IHIは今回の買収を通じて、都心部の再開発ビルへの新設需要や既存の機械式駐車場の更新需要を取り込む。両社の既存顧客に互いの製品を提案して販売を増やし、設計やメンテナンスを共通化して効率も高める。機械式駐車場関連の事業売上収益を30年度に現在比約4割増の800億円へと伸ばす目標だ。

IHIによる企業や事業の買収は、直近では2018年に子会社を通じて香港のシールド掘削機メーカー・テラテックを買収したのが最後になっていた。それ以前は毎年のように買収を実施していた。
間が空いた背景には20年の新型コロナウイルス禍などもある。注力する航空関連などの業績が悪化したため、事業構造改革を優先して取り組んできた。過去3年間で汎用ボイラーやクレーンなど10件近い事業について売却や撤退を進めてきた。
IHIの井手博社長は25年12月の取材で「構造改革は7〜8合目まで進んでいる。今後は既存事業を伸ばすためのM&A(合併・買収)も選択肢になる」と話していた。構造改革にめどが付きつつあるタイミングで攻めの買収を再開する格好だ。
IHIは機械式駐車場などの「産業システム・汎用機械事業」を、安定したキャッシュを稼ぎ出す中核事業と位置づけている。買収で収益性をさらに高め、航空エンジンなどの成長事業に継続投資できる体制づくりにつなげる。
(新田栄作)
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