会計士協会は上場会社監査を担う監査法人の会計士の最低人数を引き上げる

日本公認会計士協会は26日、上場企業を監査する監査法人の登録要件を厳格化し、最低5人としている会計士の必要人数を引き上げる方針を発表した。2025年、中小法人が監査を担ったオルツの会計不正が発覚した。中小法人に監査を依頼する上場企業が増える中、監査品質の底上げに向け合併などによる規模拡大を促す。

会計士協会は自主規制団体として、上場企業を監査する監査法人の審査・登録を担っている。公認会計士法は監査法人設立の最低ラインとして、法人に出資し経営幹部に相当する「社員」に会計士を5人以上含めることを求めている。会計士協会が上場企業の監査人に求める人数要件も同じだった。

同協会は上場企業を担当する監査法人の適格性に関する登録基準を規定しており、これに新たな人数要件を盛り込む。27年7月に開く総会での正式決定をめざし、具体的な最低人数や適用開始時期など詳細を詰めるとみられる。

最低人数を満たせなくなった場合は、一定の猶予期間後に登録取り消しとなる見込みだ。監査を受ける企業は別の監査法人を探す必要が出てくる。

ルール厳格化の契機は、人工知能(AI)開発のオルツで循環取引が発覚し、25年に上場廃止になったことだ。

担当していた監査法人シドーの会計士である社員は10人未満だった。会計士協会は、監査業務を適切に実施するためには一定規模の会計士数が不可欠とみる。不正対応などで専門ノウハウを助言する品質管理担当者の充実などを念頭に置く。

監査法人の規模が大きいほど財務面に余裕が生まれ、監査の精度向上につながるIT(情報技術)投資が可能になる。

上場企業の監査を担える監査法人は1月下旬時点で約130あり、このうち人数要件の「公認会計士である社員等」が10人未満の小規模法人が6割を占め、上場企業の1割に相当する約360社を担当している。最低人数が引き上げられれば、中小同士の合併や準大手による中小の吸収など、監査業界の合従連衡が加速する可能性が高い。

人数要件を引き上げるだけでは、一般会計士を社員に昇格させるだけの対応にとどまる可能性がある。このため会計士協会は会計士に求める「質」も引き上げる方向だ。監査の責任者を務めた経験などが想定される。公認会計士法で定める「3年以上監査に従事した社員が過半数」だけでは不十分とみている。

ある大手監査法人グループの幹部は「監査責任者として手を震わせながら監査報告書にサインした経験がないと、高い監査品質はつくれない」と語る。

上場企業監査では、中小法人のシェアが高まっている。公認会計士・監査審査会によると、24年度は25.9%と20年度(18.4%)から7ポイント上昇した。企業が大手監査法人と監査報酬の水準で折り合えず、準大手や中小の監査法人に切り替える例が増えている。

オルツの不正を巡っては証券取引所、監査業界、証券業界などが対応に動いている。日本取引所グループ(JPX)は25年12月に上場審査の改善策を発表した。内部通報制度の実効性を重点的に調べるほか、上場準備期間に監査法人などが交代している場合には、前任の監査法人に理由などを聞き取る。

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