提言を発表する慶応大の山本龍彦教授(26日、東京都港区)

ソーシャルメディアや人工知能(AI)の影響力が増す中、報道機関はどう情報空間の健全化に貢献できるのか――。慶応義塾大学は26日に報道機関向けの提言を発表した。選挙関連の偽・誤情報が拡散しやすい現状を踏まえ、「選挙時は事実か疑わしい情報を検証し、積極的に訂正・補足」をすべきだとした。

慶応大の「クロスディグニティーセンター」の共同代表を務める山本龍彦教授(憲法学)を中心に、有識者会議で議論を重ね、「AI時代の報道機関のあり方に関する提言」として公表した。26日に記者会見した山本教授は「選挙になると報道のあり方が問われる」と述べ、2月8日投開票の衆院選公示前日に発表した意義を強調した。

背景にはデジタル情報空間の変化がある。X(旧ツイッター)、ユーチューブといったソーシャルメディアは、偽情報や誹謗(ひぼう)中傷を含む刺激的な情報ほど拡散しやすい「アテンションエコノミー」の性質を持つ。提言では「事実に基づく理性的なコミュニケーションを前提にする民主主義」を支えるためには、「取材で検証された情報を届ける報道機関の役割が重要」と強調した。

アテンションエコノミーに対して、報道機関は閲覧数や広告収入を過度に追求しないよう「適切な距離を保つ必要がある」とした。報道機関が信頼されやすいよう、取材・編集過程の透明化やAI活用の指針を策定することも求めた。

2024年の兵庫県知事選では、テレビや新聞が公平性を重視して報道を控える中、ソーシャルメディア上で誤情報が広がり、有権者の投票に影響を与えたとされる。提言ではこうした「情報の空白」を避けるため、選挙中でも報道機関が疑わしい情報を積極的に検証し、「選挙の本質的な争点を提示する」必要があるとした。

ソーシャルメディアやAIが人々の意思決定や人権に強く影響するようになった点を挙げ、デジタルプラットフォームを運営する米企業などが「国家権力に匹敵する新たな権力を持つ」と指摘。報道機関に対して「国家権力とともに、デジタルプラットフォームも監視対象とすべきだ」とした。

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