チョコレートの奥深い世界に入り込む――。2月14日のバレンタインデーを前に、パリ発祥のチョコレートのイベント「サロン・デュ・ショコラ2026」が伊勢丹新宿店6階催物場(東京都新宿区)で開かれている。店頭に立つ作り手(シェフ)に会って、おいしさの秘密を直接聞く。「推し活」ブームの中で、そんな楽しみ方も広がっている。世界中のシェフと出店に向けた交渉を重ねてきたバイヤーの田嶋紘一郎さんに、話題のブランドとその魅力を聞いた。【山内真弓】

 伊勢丹新宿店では、「サロン・デュ・ショコラ」を2003年から開催している。24回目となる今年は、過去最大となる153ブランド(会期中)が出店。チョコレートの原料であるカカオ豆が高騰する中でも、工夫を凝らしたチョコレートが並んでいる。

店頭に立つ「メゾン ハタケヤマ」のシェフ・畠山和也さん=東京都新宿区で2026年2月3日、山内真弓撮影

初出店の「メゾン ハタケヤマ」

 初出店となる「メゾン ハタケヤマ」は、東京・調布にある洋菓子店「フキアージュ」のオーナーシェフ・畠山和也さんが、チョコレート中心のブランドとして立ち上げたばかり。新しい味と出会おうと、多くのファンが駆けつけている。

 熱狂を呼ぶおいしさの秘密は、「手作り」にある。例えば、オレンジなど果物の皮にチョコレートをかけた「オランジェット」。通常は乾燥させた皮にチョコレートを塗るだけだが、「メゾン ハタケヤマ」では、分厚く切り、手作業で特製のジュレを忍ばせてからチョコレートを塗っている。

「メゾン ハタケヤマ」の「フリュイコンフィメゾンハタケヤマ」=東京都新宿区で2026年2月3日、山内真弓撮影

 田嶋さんは「かんだ瞬間に、オランジェットの中からジュレがじゅわっと出てきます。手作りならではの食感です。大量生産はできないけれど、他では出せない味わいを生み出すのが、畠山さんのチョコレートの特徴です」と魅力を話す。

「プリズム ラボ」はユズの香りを生かす

 また、2回目の出店となる「プリズム ラボ」は、シェフの柴田勇作さんが徳島県にオープンした話題店。徳島の名産品である希少な「木頭(きとう)ユズ」の香りと渋みを生かしたチョコレートが人気だ。

店頭に立つ「プリズム ラボ」のシェフ・柴田勇作さん=東京都新宿区で2026年2月3日、山内真弓撮影

 「チョコレートをかけたり、砕いてナッツと混ぜたり――。木頭ユズを使ったクリエーション(創作活動)に、お客さんが殺到し、大行列ができています。木頭ユズは、三つ星レストランや料亭などで使われるようなユズで、生産量も少ないです」(田嶋さん)

世界大会優勝「杏と塩」 おいしさの秘密

 毎年常連の「ナオミ ミズノ」は、「ワールドチョコレートマスターズ世界大会」(3年に1回開かれるチョコレートの世界大会)で、07年に総合優勝した水野直己さんのブランドだ。

 「水野さんは、京都・福知山にある洋菓子店『洋菓子マウンテン』のシェフです。『ナオミ ミズノ』というブランドでの出品は、新宿と京都の伊勢丹で開催する『サロン・デュ・ショコラ』でしかやっていません」(田嶋さん)

 そんな期間限定の特別なブランド「ナオミ ミズノ」では、世界大会(ワールドチョコレートマスターズ)で優勝したチョコレート「杏(あんず)と塩」が味わえる。

 「優勝した日本人は、これまでに2人しかいません。『杏と塩』は、優勝したときのボンボンショコラ(ひとくちサイズのチョコレート)で、とてつもなくおいしいです。中にはアンズのフレーバーが入ったチョコレートのガナッシュが入っています。コーティングはミルクチョコレートで、外には死海の塩を振っています」(田嶋さん)

「ナオミ ミズノ」の「杏と塩」=東京都新宿区で2026年2月3日、山内真弓撮影

 そのおいしさは、緻密に設計されているという。

 田嶋さんは「死海の塩は結晶が粗いので、口の中で溶けるのが遅い。だから、口の中にボンボンショコラを入れた後に、アンズのフルーティーな香りとミルクチョコレートの甘さが広がり、最後に塩味を感じます。飽きずに何個でも食べられます」とその魅力を語る。もともとは、いろいろな味が楽しめる「アソート」の一粒だったが、人気が高く、「杏と塩」だけが5粒入った商品ができた。

 また、すべてのフレーバーが新作の「コンビナシオン」(マカロン)も店頭に並び、5種類の繊細な味を堪能できる。田嶋さんは「とんでもなくおいしい」と評するが、その理由は「味の合わせ方」だという。

「ナオミ ミズノ」の店頭には、「コンビナシオン」などの名作が並ぶ=東京都新宿区で2026年2月3日、山内真弓撮影

 「水野さんは『違う食材の、同じ要素の味を引き出して掛け合わせていく』と表現します。例えば、『バナナを食べると、甘い香りの後に、苦味を感じる』といい、そんなバナナの苦味とカフェオレの苦味を調合したのが、『カフェオレジャム×バナナガナッシュ』のコンビナシオンです」(田嶋さん)

「シェフにおいしさの秘密を聞いてみて」

「サロン・デュ・ショコラ」のバイヤー、田嶋紘一郎さん=東京都新宿区で2026年2月3日、山内真弓撮影

 開店前から並んだり、地方から駆けつけたり――。「サロン・デュ・ショコラ」は、お目当てのチョコレートが売り切れる前に買おうとするファンも多く、チョコレートの世界にも「推し活」の波は押し寄せている。

 田嶋さんは「チョコレートを作っているシェフとSNSで直接つながる(フォローする)ことができる時代になったことも大きい」と話す。ファンはSNS上で、シェフのチョコレートへのこだわりを知ることができるようになったが、「『サロン・デュ・ショコラ』ではシェフと会えて、直接話せます。そのことが熱狂につながっているのではないでしょうか」(田嶋さん)

 田嶋さんは「最高峰のチョコレートばかりなので、ぜひ楽しんで、味わってください。(店頭にいる)シェフから話を聞いて、チョコレートのおいしさの秘密を確かめてほしい。チョコレートの奥深い世界に入っていただきたいです」と話し、「サロン・デュ・ショコラ」への来場を呼びかけている。

 開催は15日まで。混雑緩和を図るため、時間帯によっては事前予約や入場整理券などが必要となる。詳細は、公式サイトで確認できる。

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