ソニーは半世紀以上にわたる看板商品だったテレビを切り離す

ソニーグループがテレビ事業の分離を決めた。中国企業が主導する合弁新会社に移管する。かつての看板事業を切り離す判断は、家電製品を柱とするモノづくり経営からの決別を象徴する。

エレクトロニクス産業はテクノロジーの新陳代謝が著しい。経営者には成長分野を見極め、主力事業の入れ替えも辞さない姿勢が求められる。会社の本業を再定義するほどの聖域なき改革を、今後の成長につなげてもらいたい。

ソニーはすでにエンターテインメントを主軸とする経営へ転換を進めている。映画や音楽、ゲームなどの知的財産を連携してグループの総合力を生かす戦略だ。

エンタメ主体のコングロマリット(複合企業)を目指すうえで、問われるのはコンテンツを創る力だ。そのなかで家電の顔だったテレビの存在感は低下していた。

事業の入れ替えは着手済みだ。KADOKAWAやバンダイナムコホールディングスに出資する一方、金融事業は分離・独立させた。足元では半導体の価格高騰が株価の重荷になっているものの、26年3月期の連結純利益は1兆1300億円と過去最高を更新する見込みだ。路線転換は一定の成果を上げているといえるだろう。

陶琳・最高財務責任者(CFO)は「ポートフォリオは常に最適化していく」と強調する。今後もグループ全体の事業構造の柔軟な見直しをいとわない構えだ。

経営の柱に何を据えるかを問われているのはソニーだけではない。「どんな会社であるべきか」というビジョンを明確に示し、変化に果敢に挑む覚悟が要る。その選択は企業の盛衰に直結する。

日立製作所はデジタル基盤の「ルマーダ」を軸に事業の入れ替えを進め、一時の経営不振を脱した。富士フイルムホールディングスも写真からエレキ、医療へと収益源を多角化し、稼ぐ力を保つ。

他方で、中核事業の見直しが遅れたパナソニックホールディングスやシャープは苦戦が続く。過去の成功にとらわれていては、動きの激しいエレキ産業で生き残るのは難しい。イノベーションの行方に目配りし、大胆に先取りする経営者の決断力が問われよう。

日本勢に共通する課題は生成AI(人工知能)への取り組みだ。オープンAIやアルファベットなど米国勢が巨額投資で先行しており、インフラ整備を含めて巻き返しに全力を挙げる必要がある。

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