
トヨタ自動車グループの製造系労働組合は18日、2026年春季労使交渉の要求書を会社側に一斉提出した。金額を公表していないトヨタ労組などを除く123組合の平均賃上げ要求額は月1万7820円と、5年ぶりに前年を下回った。米国の関税政策など事業環境に逆風が吹くなか、産業競争力の確保へ賃上げの勢いを持続できるかが試される。
全トヨタ労働組合連合会(全トヨタ労連)が加盟組合の要求をまとめた。平野康祐事務局長は18日の記者会見で「持続的な賃上げが本当に大きなポイントだ。ただ、単に要求するだけでなく原資を労使で増やせなければ賃上げはできなくなる」と強調した。

平均賃上げ要求額は、賃金を一律で引き上げる「ベースアップ(ベア)」相当を含む「改善分」と定期昇給に相当する「制度維持分」の合計を指す。全トヨタ労連は1月に決めた要求方針で、前年に記載した「昨年を超える積み上げ」を掲げなかった。
26年3月期に最高益を見通すデンソー労組は前年と同額の2万3500円だった。アイシンと豊田自動織機も前年と同額となった。トヨタ労組は平均額を明らかにしていないが、職種・階級ごとに8590〜2万1580円を求めた。全体の平均要求額は前年を109円下回った。
米関税の逆風下、原資確保カギ
賃上げ要求の重荷になったのは自動車業界を取り巻く環境の不透明さだ。トヨタは26年3月期に、トランプ米政権による高関税政策が1兆4500億円の下押し要因になると見込む。円安による部材費の高騰やレアアース(希土類)の供給網リスクもくすぶる。
労組側は27年度以降を見据えて賃上げの持続性を重視した。企業が持つ賃上げの原資を今後も捻出し続けるため、まずは労使で生産性向上などに努める必要があると踏んだ。平野氏は「物価上昇を超える賃上げを定着させるためには、原資を確保する取り組みが何より大事だ」と訴えた。

一方で、人手不足が深刻化する中小企業は採用競争力の向上も待ったなしだ。全トヨタ労連の集計では、従業員300人以下の中小組合の賃上げ率は6.06%で全体平均を上回った。「採用が厳しく、上げないと人が来ない状況」という。
25年の春季労使交渉では加盟組合全体の平均賃上げ額が1万6430円だったのに対し、中小組合は1万5328円にとどまった。体力の乏しい中小の賃上げには、労務費の製品への価格転嫁を大企業が受け入れることが欠かせない。
年間一時金の平均要求は過去最高となる5.29カ月分となった。トヨタの国内生産台数は1日あたり約1万4000台と過去最高の水準となるなか、現場の負荷に報いたい考えだ。
競争力維持へ働き方見直しも
厚生労働省によると、物価変動の影響を除いた25年の実質賃金は前年から1.3%減った。マイナスは4年連続で、物価上昇に賃金の伸びが追いついていない。裾野の広い自動車産業で賃上げの勢いが減速すれば、国内の産業全体にも響きかねない。
メーカーによって濃淡もある。マツダ労組は現行制度となった03年以降で、過去最高の月1万9000円の賃上げを求めた。ホンダ労組は前年を1000円下回る月1万8500円とした。
日本勢は電気自動車(EV)や自動運転で先行する中国メーカーの台頭で、アジアを中心にシェアを落とし始めている。開発力の強化と並行して現場の競争力を維持するには、個社を超えた産業全体の働き方の見直しも重要になる。
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