まいばら農業塾修了式の後に開かれた意見交換会=米原市世継で2026年1月24日午前10時14分、長谷川隆広撮影
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 滋賀県米原市が新規就農を検討する人に開く「まいばら農業塾」に50代の毎日新聞記者が入塾し、このたび全課程を終えた。塾での体験を伝える連載「おいちゃん記者、鍬(くわ)を持つ」の最終回となる13回目。【長谷川隆広】

 猛暑の中、畑を耕してふらふらになった。あれから半年。1月にまいばら農業塾3期生の全課程が終わった。農作業に追われたせいか、とにかくあっという間だった。もちろん、まだ「ど素人」から「ど」が取れたかどうか。ふと、昨年10月に聞いた2期生の体験談を思い出す。「塾が終わった途端、『えっ、一体何から始めたらいいの』と試行錯誤が始まる」って。確かそんなことを言ってたなあ。まさに今、実感。まだ通年での農業経験もなく、次に何を植えればいいものやら。戸惑いを感じながら迎えた「卒業」だった。

 修了式も行われ、恭しく修了証の授与も。うれしいことに、春菊や小松菜などの種ももらえた。式の後、今後の農業との関わりについて意見交換会があった。そこで出た同期生の意見にはうなるばかり。「耕作放棄地を何とかしたい」「農に関することをもっと勉強したい」「古民家に住んで庭を畑にし、地域の農業を手伝いたい」「働きながら続けられる農業のスタイルを見つけていきたい」「稲作に挑戦したい」。「~したい」って、前向きな意見がほとんど。みなさん、よく考えている。

 私? 事務局から「今後どうしますか?」と問われ「逆にどうしたらいいですか?」と疑問で答える始末。この先、農業といかに関わっていくのか。自分の姿がまだ見えない。半年の研修だけでは、自信も経験もまだまだ。農業を長年続けている知人に聞くと「1年として同じ年はない。天候や害虫、生育具合など、毎年、異なる状況に対応しなくてはならない」。いやはや農業は奥深い。でも、農業塾で学んだおかげで、その奥深さの一端は理解できるようになった。これは喜んでいいことなのかも。

 修了式でもらった種には事務局からの「願い」が込められているとか。これからも農業を続けてくださいね、と。はい、農業は続けていきます。細々とでも。式の後、さっそくしんまい農園の延長利用を申請した。夏に4期生が入塾してくるまで畑が使える、これはありがたい。

 冬場は座学が続いたので、農作業についてあまり書かなかったな。実はちょっと驚きの出来事もあった。ここで畑の「その後」に触れておきたい。

 昨年12月頭には夏に作付けした野菜の収穫がほぼ一段落。とはいえ、ダイコンもカブもブロッコリーもハクサイもまだ畑にそこそこ残っていた。4個残っていたハクサイは雪や霜など寒さに備えて外葉ごとひもでくるみ、冬の間、随時収穫。ブロッコリーは普段食べている先端部分を収穫した後、脇芽が次々に成長。畑に行くたびに、一口サイズに育った脇芽を収穫し、味わった。

 同じころ、畑の空いたスペースに4種類のタマネギの苗を植えた。寒さ対策の黒いシートを敷き、知り合いの農家に分けてもらった苗を約50本。無事に根付いたはず。でも、1月になっても2月になってもあまり苗が大きくならない。気温が上がる時期まで、根を張ることに集中しているのだとか。度々食卓に上るタマネギなのに、栽培については何も知らなかった。

 1月末には畑で「事件」発生。農園で飼育している羊4匹が脱走し、何と私の畑に残っていた野菜をほとんど食べてしまった。後で羊は確保されたけど、畑にはいくつもの足跡。笑い話のようなオチが待っていた。数々の害虫や雑草と闘ってきた私の野菜も、羊には歯が立たず。せめてもの温情なのか、タマネギの苗だけは無傷で残してくれた。ああ、ありがとう。これを機に、次の栽培に向けて畑を耕し直すことにした。

 3月にはジャガイモの種芋を植える予定だ。タマネギ、ジャガイモ……。あとニンジンがあればカレーだな。今後、何を植えて、どう育てていくのか。自分次第の楽しさもあり、自分次第の難しさもある。私の農業は、いよいよこれからが本番なのだ。

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 まいばら農業塾体験記は今回で最終回。しかし、農業に終わりはありません。今後もペンと鍬を持ち、農業について適時発信していきます。

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