合同会社「十色」代表のサカール祥子さん=さいたま市緑区で2026年1月19日、増田博樹撮影

 さいたま市に広がる見沼田んぼの一角でトウガラシを栽培する合同会社の「十色(といろ)」(さいたま市浦和区)。世界中のさまざまな品種を手がけるとともに、その特徴や調理法などの魅力を発信し、イベントも積極的に企画し普及に力を入れる。代表のサカール祥子さん(47)は、「さいたまを激辛の聖地に!」を掲げ奮闘している。【増田博樹】

 ――農業に携わるきっかけは?

 ◆大学院修了後に障害者福祉に携わり、その後、十色の起業直前に勤務したNPO法人では野菜の栽培や農業体験イベントなどに取り組みました。その中で、現場である見沼田んぼに関わる人たちの高齢化という現実も見えてきました。見沼田んぼの環境を次世代に残すため、持続可能な農業収入が必要と考えました。

 ――就農に当たって最初は何を栽培しようと考えましたか。

 ◆見沼田んぼの土に合うのはサトイモでした。ただ、収益を計算してみると想像より1ケタも2ケタも少なかったのです。また、狭い農地でトン単位で収穫できてしまい、運搬用の機械や倉庫が必要で、あまり現実的ではないと考えました。マメもやってみましたが手間の割に収益性が高くありませんでした。

 ――2021年に仲間2人と十色を設立しました。最終的になぜトウガラシを?

 ◆いろいろな作物を試す中で、トウガラシが必要な人を探してみたところ、多くの声がかかったのです。また、作っていた品種だけではなく、「こんなトウガラシはないか?」というリクエストもあり、これは他の野菜ではあまりないことで面白いなと。狭い農地で1株から長期間収穫できますし、辛くないものや、生で食べておいしいといった品種ごとに個性があるのも魅力でした。

 ――どんな品種を栽培していますか。

 ◆世界12カ国の約50種類です。珍しいところではブラジル原産の「スパングルス」でしょうか。色が白から紫に変わりだんだん赤くなる、ベルの形をしたトウガラシです。かじるとライチのような香りがして、徐々に辛さを感じるのが特徴で、他では多分手に入りません。

 過去に辛さのギネス世界記録をとった「キャロライナリーパー」や「ジョロキア」もあります。おすすめは、最近はスーパーでも扱うようになったハラペーニョ。肉厚でうまみも感じることができ、ピクルスやサルサソースにぴったりです。

 ――持続可能な収益という面ではどうですか。

 ◆流通量の少ない品種もあり、いわゆる相場というものがありません。原価を計算したうえで、自分で値段を決めることができており、原価を割るような注文はお断りしています。収益はサトイモの約10倍はあるでしょうか。市場が大きくなりすぎると値崩れしますが、ある程度は広げる必要があり、今はそれを作っている最中かと思います。

 ――栽培にあたってのこだわりや苦労はありますか?

 ◆十色を作った大きな理由に、「見沼田んぼの環境を次世代に残す」ということがあります。だから農薬や化学肥料は使っていません。土地が低く水分が多いので、土を高めに盛ったり、最近は猛暑対策で畝に敷くシートを黒から白のものに変えたりしています。虫のフェロモンを活用した害虫対策もしていて効果は出ていますが、苦労は絶えません。

 ――今、力を入れているのは?

 ◆国産トウガラシの産地が次第に減って生産者を探しているという相談が増えており、そうした産地の種などを譲ってもらい今年から試験的に栽培しています。大阪の「十房」や、秋田の長いタイプの鷹の爪などです。日本には実はいろいろなトウガラシ文化があり、それも伝えていければと思います。

 ――今後の目標は?

 ◆全国各地に拠点を持って栽培したいですね。例えばハラペーニョは、埼玉で作ることができるシーズンが6~11月と限られますから。また、収益確保に苦しんでいる方がいれば生産に協力してもらうこともできると思います。将来的にはトウガラシの質、量ともにトップになりたい。「トウガラシといえば十色」という感じになればと思っています。

サカール祥子(さかーる・さちこ)さん

 旧浦和市出身。浦和西高卒、東京農大大学院造園学修士課程を修了し、NPO法人などに勤務。趣味は旅行。農閑期の冬は長期休暇のチャンスだが、事業計画やカタログ作り、資金調達のための書類作成、展示会準備などで多忙を極め、行けていないのが悩みという。ハンガリー人の夫と子供2人とさいたま市で暮らす。「今年は夫と子供だけで旅行に行ってしまいました。ちょっと悲しい」

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