「甲冑のよう」と評判のランドセル「赤色小札黄銅鋲背嚢具足」を紹介する岡田憲樹さん=名古屋市中村区で2026年1月23日午後0時22分、荒木映美撮影

 「戦国武将の甲冑(かっちゅう)のようなランドセル」「重たそう」――。SNS上で今、話題になっているランドセルがある。製作したのは、村瀬鞄行(かばんこう)(名古屋市中村区)の職人、岡田憲樹(のりき)さん(44)だ。繊細かつ豪華な見た目だが、実は岡田さんの「もったいない」という思いから生まれた。

「アーティスティックデザイン賞」に輝く

 製品は甲冑をイメージし、その名も「赤色小札黄銅鋲背嚢具足(あかいろこざねおうどうびょうはいのうぐそく)」。「井伊の赤備え」と呼ばれたことで有名な彦根藩・井伊家の甲冑を、赤色の革で再現した。かぶせ(フタ)は甲冑の肩や腰を防御する部分をイメージ。重厚なデザインや端切れを利用したエコ精神などが評価され2024年、国内最大規模の革製品コンテスト「ジャパンレザーアワード」で「アーティスティックデザイン賞」を受賞した。

 岡田さんがランドセル職人になったのは13年前。26歳の時に勤めていた会社を辞め、漫画家を志した。しかし30歳で区切りをつけ、村瀬鞄行に入社。実力をつけ、今では難易度の高い日本鞄(かばん)ハンドバッグ協会の技術認定試験1級取得者にまでなった。

 耐久性や見栄えが重視されるランドセルの材料は、革の中でも品質の良い部分を使う。同社では馬の尻の革であるコードバンと、牛のヌメ革の二種類を使うが、専用の抜き型で裁断するため、多くの端切れが生じる。

 やりがいも実力も高まる日々だったが、大量の端切れに「使えるのにもったいない」との思いが消えなかった。「残った革だけでランドセルが作れないか」。そう考えていた岡田さんが目を留めたのが、ランドセルのパーツを裁断する型だった。型の姿が甲冑の「草摺(くさずり)」と呼ばれる部分に似ていることに気づき、作品の構想が浮かんだ。漫画家志望でもあった画力を生かし、デザイン案に仕上げた。

 端切れを少なくするため、しわやキズのある部分も使用。手作業で一つひとつのパーツの微調整を繰り返し、半年以上かけて完成させた。通常重視される耐久性や軽さではなく、あくまでも見た目にこだわったため、重さは平均的な商品の約1・3キロに対し約2・1キロ。「観賞用を推奨します」と笑う。

「文化や歴史知るきっかけに」

 製品は一つ50万円。受注生産で販売している。海外を中心に10件以上の問い合わせがあり、これまでに受注した2件を製作中だ。

 少子化でランドセルの需要減少が想定される中、業界は海外を含めた市場の拡大を目指す。「このランドセルが、日本の文化や歴史を知ってもらうきっかけになれば。これからは培った技術を別のかっこいい商品作りにも応用したい」

岡田憲樹(おかだ・のりき)さん

 高松市出身。ランドセルの製作では同じ姿勢を長時間保ちながら作業することも多いため、マイボトルでお茶を飲んで息抜きをする。趣味は読書や映画鑑賞。【荒木映美】

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