
政府がガソリンへの補助金を再開した。店頭価格を1リットル170円程度に抑えるとして、まず同30.2円の支給を始めた。イランがエネルギー輸送の大動脈であるホルムズ海峡を事実上封鎖し、石油相場は高騰する。16日に開始した石油備蓄の放出と併せ、燃料高の影響を緩和する狙いだ。
ただ補助金は価格が上がれば需要が減る市場原理をゆがめる。供給不安が生じる局面で消費を下支えする政策は矛盾する。政府が小売価格目標を掲げるのもおかしい。脱炭素の取り組みにも反し、問題が多いと言わざるを得ない。
16日時点のガソリン価格の全国平均は前週から29円上がり、190.8円と史上最高値を更新した。翌週には200円超へ一段の上昇が予想され、政府は19日から目標価格の170円との差額分を拠出し始めた。灯油・重油はガソリンと同額、軽油は旧暫定税率相当分も上乗せした額を補助する。
政府は物価高対策で2022年1月から石油元売り会社に補助金を配り、卸値に反映させて店頭価格を抑えてきた。当初は3カ月の予定だったが、ロシアのウクライナ侵略で原油高が進むと補助金を積み増し、延長を繰り返した。
昨年末にはガソリン税に上乗せされていた25.1円の旧暫定税率を廃止した。補助金もようやく打ち切ったが、4年間の累計は約8.2兆円に達した。
4月1日からの軽油の旧暫定税率廃止分と合わせて、年1.5兆円の税収減を穴埋めする財源は未定で、補助金再開は二重の財政負担になる。財政の悪化懸念が強まれば、さらなる円安が輸入原油高を招く悪循環に陥りかねない。
補助後の小売価格の全国平均を一定水準に保つ仕組みも理解に苦しむ。原油高が進めば、財政負担は際限なく膨らむ。そもそもなぜ170円かの説明もない。
燃料高が家計や企業活動に与える影響は確かに大きいが、公的支援は低所得世帯や零細企業、農漁業従事者、物流事業者など、本当にしわ寄せが重い層に絞るのが筋だ。補助開始から4年もたつのに一律のバラマキを繰り返す無策を批判されても仕方あるまい。
ホルムズ海峡の封鎖は長期化が心配される。政府は支援を実効的なものに修正し、出口戦略もきちんと示すべきだ。国民に省エネへの協力を求めつつ、問題の根幹である中東危機の鎮静化に向けて外交努力を傾けるのは当然だ。
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