買収合戦を米パラマウント・スカイダンスが制した=ロイター

米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリーをめぐる買収合戦を、競合事業者の米パラマウント・スカイダンスが制した。動画配信大手の米ネットフリックスが事業取得の提案で先行したが、パラマウントは買収金額を1100億ドル(約17兆5000億円)まで引き上げて逆転した。

有利な条件を出した陣営が買収者として選ばれるのは当然だ。しかしトランプ米大統領が競争法に基づく介入を示唆したのは問題で、ワーナー傘下の米放送局CNNの報道に過剰な影響を及ぼす懸念もある。

CNNはリベラルな報道姿勢で知られ、トランプ氏を批判的に報じてきた歴史がある。経営陣にリベラルな人物が目立つネットフリックスが買収案を公表すると、同氏は市場占有率の上昇に言及して難色を示した。複数の米メディアによると「私が決定に関与するだろう」と発言した。

保守派がCNNの報道に不満を募らせていたのは事実だが、そうであったとしても競争法を利用してM&A(合併・買収)に介入するのは間違いだ。法律の恣意的な運用が相次げば企業再編の予見可能性が低下し、競争力を高める機会などを損なうことになる。

パラマウントは米IT(情報技術)大手オラクルの共同創業者、ラリー・エリソン会長の一族が経営する。同氏は米共和党の大口献金者だ。パラマウント傘下で米3大ネットワークを形成しているCBSでは、2025年にエリソン氏一族が経営権を取得した後、米民主党議員の番組出演の阻止が疑われる問題が起きた。

CNNも経営体制が変わるのに伴い、政権に迎合する報道が増えるのではといった懸念が強まっている。CNNは国際的な影響力も大きく、より重大な問題に発展する可能性がある。

合衆国憲法修正第1条は報道の自由を保障している。政権は言論に不満があれば言論で反論すべきだ。政治的圧力で不都合な事実を明らかにする機能が弱まれば、隠されていた問題を是正する機会が減る。その影響は社会全体に及ぶと認識しなければいけない。

日本では戦後、米国を参考に放送免許や電波割り当ての制度を整えてきた。政治と放送の距離感がたびたび焦点となった経緯もある。米国における企業再編やその影響を人ごとにはせず、今後の動きを注視していく必要がある。

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