次期中期経営計画について説明する大矢光雄社長(25日、東京都中央区)

東レは25日、2029年3月期に本業のもうけを示す事業利益で2300億円を目指すとする3カ年の新中期経営計画を発表した。炭素繊維事業やフィルム材などの機能化成品事業がけん引し、26年3月期予想比で53%伸ばす。最高益を更新する見通しだ。構造改革や価格施策も継続し、事業利益の伸びのうち成長と構造改革効果を半々ずつを見込むとした。

売上高にあたる売上収益は26年3月期予想比で15%増の3兆円とし、事業利益率は8%と2.2ポイントの上昇を見込む。重視する投下資本利益率(ROIC)は約5%から約7%へ引き上げ、35年近傍には約10%を目指すとした。

同日の記者会見で大矢光雄社長は「事業ポートフォリオ改革はまだ道半ばで、成長を再点火することが新中計の主眼だ。成長戦略と構造改革の質と確度を高めていく」と話した。

事業別では主要顧客の米ボーイング向けが伸びる炭素繊維事業が、成長をけん引する事業の一つだ。炭素繊維が多く使われている中型機「787」の生産台数が回復傾向で、さらにロケットなど宇宙分野や防衛向けも需要が旺盛だ。同事業の29年3月期の売上高は42%増の4300億円、事業利益は2.4倍の470億円に伸びると見込む。

フィルムや樹脂などを扱う機能化成品事業も、人工知能(AI)半導体やデータセンター向けの材料などの販売を伸ばし、事業利益で52%増の930億円を見込む。25年3月期に売上収益を1兆円の大台に乗せた繊維事業は、ファーストリテイリング傘下のユニクロと5期目となる戦略的パートナーシップを結び強化する。産業用途向けの収益も改善させ売上収益で1兆1800億円まで増やす計画だ。

競合との競争激化などを背景に販売数量が伸び悩み、26年3月期までの3カ年の中計で掲げた財務目標には届かない見込みだ。そのなかで採算が悪化していた事業の構造改革や製品価格の引き上げの2施策に取り組み、利益の改善を進めてきた。値上げ施策では26年3月末までに約300億円の増益効果を見込んでいる。

新中計期間でも両施策を継続し、価格施策では29年3月期までに事業利益で270億円の増益効果を目指す。構造改革では風力発電機の翼向けなど汎用品の炭素繊維を手がけるゾルテック社や、欧米のフィルム子会社などは継続して収益改善を目指す。さらに電気自動車(EV)の内装材向けが伸び悩む人工皮革を新たに改革対象とした。

今回の中計において足元の中東情勢は前提に入っていないが、東レが手がける樹脂や繊維、炭素繊維などの製品は、ナフサなど石油化学由来の原料を使う。ホルムズ海峡の事実上の封鎖によりナフサは調達難となり価格も高騰している状態だ。

原料の複数調達などを進めており「4月にたちまち供給が途絶えてしまうことはない」(大矢社長)とし、現時点の在庫運用では26年4〜6月期の中盤以降に影響が出てくる可能性があるとした。事態が長期化した場合は、「東レの製品がないと最終製品が作れないようなものや、人の安全に関わるものなどを優先していくことになるだろう」話した。

株主還元では29年3月期に株主資本配当率(DOE)で3%以上を目指すとした。過去2年間は政策保有株の売却と同規模の1500億円規模の自社株買いを決めたが、今後も機動的に行う方針だ。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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