北海道新幹線は26日、新青森―新函館北斗間が開業してから10周年を迎えた。地元には観光客が増えるなど好影響があり、新幹線の駅を核とした広域観光ルート整備の動きもある。一方で収支は赤字が続いており、JR北海道は2038年度末以降とされる札幌延伸を経営改善の「鍵」としている。
北斗市の新函館北斗駅前では21、22日に北海道新幹線開業10年の記念イベントがあり、にぎわいをみせた。市は開業に合わせ、駅南側を開発。駅前にはホテルなどが建設されたが、今も「FOR SALE」の看板を掲げた更地が目立つ。新幹線は地域にどんな影響を及ぼしているのか。
市水産商工労働課によると、市は約13・5ヘクタールを開発。このうち約5・3ヘクタールを商業用地として造成したが、約2割にあたる1万442平方メートルが未活用となっている。この10年は新型コロナウイルス感染症の流行で経済活動が低迷した時期もあり、大きな影響を受けた。
一方で、25年1月にはIT企業が進出。現在、下水道管の点検をAI(人工知能)で診断し、可視化する取り組みを進めているという。
北斗市は隣にある観光地・函館の知名度に加え、公立はこだて未来大や函館高専などIT人材が多い利点がある。そのため、企業が進出先に選び、池田達雄市長は「現在も複数企業から問い合わせがある。新たにホテルなどの建設計画もあり、今後も駅前開発を進めたい」としている。
北海道と青森県の125団体でつくる「青函圏交流・連携推進会議」は2月、青函圏フォーラムを開催した。
青函地域の観光関係者によるパネル討論に出席した北斗市観光協会の斉藤亮主任は、駅前のイベント開催や、地元の農業と漁業の体験プランなどの取り組みについて紹介した。
北海道新幹線の札幌延伸は38年度末以降と見込まれており、斉藤主任は「札幌延伸までに北斗の定番行事として根付かせたい。新函館北斗は(札幌までの)通過駅になるが、新たな挑戦として受け止めている」と意欲を示す。
木古内町の「道の駅」は人気
また、北海道新幹線で道内最初の駅となる木古内駅がある木古内町。町は地域振興の効果を高めようと、新幹線開業を控えた16年1月に道の駅「みそぎの郷 きこない」を開業した。
来館者は17年11月に100万人を達成すると、25年5月には500万人を突破。北海道じゃらんの「道の駅満足度ランキング」で、計4度の1位に輝いている。
施設を運営する木古内公益振興社の北島孝雄代表理事は「想定より早いペースで500万人を達成できた。来館者のニーズに応じて整備を進めてきた。これからも来場者が楽しめる道の駅づくりに努めたい」と語る。
北海道新幹線開業を境に木古内町の観光入り込み客数は15年度の約15万人から16年度は約62万人に急伸。24年度も約72万人と高い水準を維持している。
木古内駅を核とした広域観光ルートの整備に向けた動きもある。新幹線開業前の10年度に設立した渡島西部と檜山南部の9町などでつくる「新幹線木古内駅活用推進協議会」は、木古内駅から各観光地に向かう2次交通の整備などに取り組んでいる。
事務局の町まちづくり未来課は「協議会を構成する自治体にある特産品の全国発信や交流人口の拡大に向け取り組んでいきたい」。
北海道新幹線開業10周年を機に、地域活性化への動きを加速させたい考えだ。【三沢邦彦】
JR北「歯を食いしばり…」
JR北は北海道新幹線を「北海道と本州を結ぶ大動脈」とうたっている。しかし札幌駅までの延伸は複数のトンネル工事が難航し、当初計画の30年度開業から8年以上遅れる見通しだ。現行区間では新型コロナウイルス禍以降も年間120億円程度の赤字が続いている。
JR北は現状をどう受け止めているのか。綿貫泰之社長は18日の定例会見で「現行区間はあくまで部分開業。赤字はほぼ想定内」と説明した。
JR北は札幌まで開業して初めて利益が出る計画と強調したが、札幌までの延伸は38年度末以降。開業まで厳しい収支が続くことになる。
JR北は複数の経営改善策を挙げている。札幌駅前の再開発▽ホテルや賃貸マンションの展開強化▽東北と北海道を往来する修学旅行客やインバウンド(訪日客)などの団体利用を促進――などで改善を図るという。
国が全国5地域に新幹線を走らせる整備新幹線の計画を打ち出したのは1973年。16年の開業まで40年以上かかった。綿貫社長は「北海道に新幹線が来るのかわからない状態だった」と振り返り、「札幌開業まで歯を食いしばって頑張っていく」と意気込んだ。【和田幸栞】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。