九州電力と西部ガスが共同で建設した「ひびき発電所」=北九州市若松区で2026年3月24日午後1時56分、久野洋撮影

 九州電力と西部ガスが共同で北九州市に建設した液化天然ガス(LNG)火力発電所「ひびき発電所」が31日、営業運転を始める。ライバル同士の両社だが、自社のLNG基地内に発電所を持ちたい西部ガスと、二酸化炭素(CO2)排出削減で石炭・石油火力からの転換を進める九電の思惑が一致した。西部ガスは電力販売で競争力を高めたい考えだ。

 ひびき発電所は九電が8割、西部ガスが2割を出資する。北九州市の臨海部にある西部ガスの「ひびきLNG基地」内に、九電がノウハウを提供して建設した。出力62万キロワットで、約110万世帯の年間消費電力相当分を発電できる。

 LNGはCO2排出量が比較的少なく、火力発電で石油や石炭からの転換が進む。九州では太陽光など再生可能エネルギーの比率が年々高まっているが、発電量が天候に左右されやすく、火力発電の重要度は高い。ひびき発電所は最新鋭の発電機を備え、「発電効率が世界的にも高水準」(担当者)という。起動から送電までの時間も短縮し、再生エネの増減分の調整に適しているという。

 ひびき発電所はもともと西部ガスの社運をかけた構想だったが、紆余曲折の道をたどった経緯がある。2014年に大規模プロジェクトのひびきLNG基地が操業。16年の電力小売全面自由化を控え、基地内に最大出力160万キロワットの発電所建設を構想していた。

 東日本大震災後に全国の原発が一斉に停止し、東京ガスや大阪ガスが発電所を建設しており、西部ガスにとっても悲願だった。

九州電力と西部ガスが共同で建設した「ひびき発電所」の発電機=北九州市若松区で2026年3月24日午後2時14分、久野洋撮影

 ただ、単独での建設はノウハウや資金面で課題があった。14年に大阪ガスと共同検討を始め、20年の運転開始を目指して用地の環境アセスメントなどの手続きを進めた。しかし、10年代半ば以降、九州では原発の再稼働が始まり、太陽光発電も普及。火力発電事業は停滞し、大阪ガスとの提携も解消していた。

 その後、新たに手を結んだのが、古い発電所を段階的に廃止してLNG転換を急ぐ九電だった。電力やLNG販売で競合するが、「環境アセスを済ませた用地があり、発電所建設の期間を短縮できる利点は大きい」(九電担当者)と判断。22年に西部ガスと合同会社を設立した。

 九州では近年、半導体工場やデータセンターの進出計画が予定され、電力需要の増加が予想されている。再生エネの調整用電源に対する国の支援もあり、ひびき発電所には追い風となっている。

 中東情勢が悪化する中、石油調達への不透明感が増しているが、両社とも東南アジアやロシアなどからLNGを輸入しており、中東依存度は低い。長期の購入契約を結んでいるため、LNG価格が高騰しても発電所への影響は当面はないとみられる。

 西部ガスの加藤卓二社長は「地方のガス事業者が自前の電源を持つことで、エネルギー業界に与えるインパクトは大きい。九電さんにも感謝している」と話している。【久野洋】

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