身体性を備える人工知能(AI)を開発する中国の星海図(Galaxea AI)は、中国ネット大手の美団などからシリーズAエクステンションラウンドで1億ドルを調達した=同社サイトより
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

CBインサイツの月次リポートでは、メガラウンドを実現した全ての未上場テック企業を詳細に分析し、資金が集中している分野、勢いを増しつつあるスタートアップ、次の変革の波を担う企業にスポットライトを当てている。

7月のメガラウンドは50件に。テック企業によるメガラウンドの件数と資金調達総額(25年7月31日時点)。出所:CBインサイツ

7月のメガラウンドの主なポイント:

医療AIが開発段階から拡大段階へ:7月には医療AI基盤モデル開発の米Aidocと、AIを活用した診療記録作成の米アンビエンス(Ambience)が、初期の成功を足がかりに医療システム全般に事業を拡大するため、メガラウンドを実現した。米オープンエビデンス(OpenEvidence)と米Tala Healthも臨床医にエージェント型AIを提供するため、1億ドル以上を調達した。Tala Healthは急増しつつあるAIユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)の仲間入りを果たした。

投資家はAIブームの次の波「フィジカルAI」に引き続き多額の資金を投じている:自動運転分野の商業的ブレイクスルーとヒューマノイド(ヒト型ロボット)分野への関心の高まりが、フィジカルAIインフラへの資金流入を促している。こうしたインフラにはロボティクス基盤モデル(米ジェネシスAI=Genesis AI、中国の它石智航=TARS)や、フィジカルAIと同義の「エンボディードAI」モデル訓練用のハードウエアプラットフォーム(中国の星海図=Galaxea AI)などがある。中国ネット大手の美団はフィジカルAIへの投資を強化しており、星海図のシリーズAエクステンション(調達額1億ドル)と它石智航のシードラウンド(1億2500万ドル)でリード投資家を務めた。

AI新興、テック大手に挑戦:AI企業は7月のメガラウンドの半数に加え、新規ユニコーン13社のうち7社も占めた。自らを米オープンAI(OpenAI)や米アンソロピック(Anthropic)の廉価版と位置付ける米レカAI(Reka AI)や、AIを搭載した次世代のブラウザーにより米グーグルの検索の牙城を崩そうとする米パープレキシティ(Perplexity)など、一部は既存勢に直接狙いを定めている。

フィンテックは金融サービスの新たな挑戦者を生み出している:7月のメガラウンド件数が最も多かった分野はフィンテックで、大型ラウンド上位4件中2件も占めた。米ランプ(Ramp)の企業価値は数週間で160億ドルから225億ドルに跳ね上がり、米ビルト(Bilt)は33億ドルから108億ドルへと3倍以上に増えた。フィンテックのリーダーは資金調達にとどまらず、積極的な拡大戦略もとっている。米アイキャピタル(iCapital)は未上場市場のチャンスをつかむ買収戦略を加速するため、7月に8億2000万ドルを調達した。

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