
森ビル系のシンクタンク、森記念財団都市戦略研究所(東京・港)は2日、経済や住みやすさなど都市を多角的に分析・調査した「日本の都市特性評価」の2025年版を発表した。東京23区を除く136都市のランキングは大阪市が5年連続で首位を維持した。福岡市が3位に浮上した半面、横浜市と京都市が順位を落とし、4位と5位で続いた。
調査は18年から実施し、今回が8回目。都市の経済活動や居住環境などを政府統計などから評価・分析し「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野87指標でスコアを算出し、順位を付けた。
首位の大阪市は経済・ビジネス、交通・アクセスの2分野で1位だった。25年の大阪・関西万博開催が18年に決定したのを機にインフラ整備やホテル建設が加速。「高級宿泊施設客室数」や「新規住宅供給の多さ」などで評価を高めた。「観光客誘致活動」の指標が大きく改善し、文化・交流分野でも2位に入った。

運営委員長を務める市川宏雄・明治大学名誉教授(都市政策)は「歴史的に国際イベントをやると都市の力は上がる。大阪市は万博がプラスに働いた。波及効果は来年以降も続く」と指摘した。「(JR大阪駅周辺の)『うめきた』は驚くレベルで変わった。中之島や難波駅前も含め、大阪が変わってきた」と活発な都市開発を評価した。
2位は2年連続で名古屋市だった。大学が集積し、研究・開発分野がトップだったほか、生活・居住分野でも首位を維持した。「育児・教育関連給付金の多さ」や「空き家率の低さ」で順位を上げたのが寄与した。「行楽・観光目的の訪問の多さ」も強みになった。
福岡市は24年の5位から3位に浮上した。「新規不動産業用建築物供給面積」でスコアが上昇し、経済・ビジネス分野が2位に入った。文化・交流分野は「観光客誘致活動」のスコア上昇が目立った。研究・開発や交通・アクセスでも高水準を維持し「バランスのとれた都市力でアジアの拠点都市としての地位を固めつつある」と評価した。
横浜市は4位で昨年の3位から後退した。「景観まちづくりへの積極度」や「自治体SNSフォロワー数」などの指標で首位を維持した。生活・居住分野では「子どもの医療費支援」のスコアが改善し、「教育機会の多様性」も1位に上昇した。一方「住宅の広さ」「電子自治体推進度」などが弱みとなった。
京都市も順位を1つ落とし、5位となった。文化・交流分野で首位、研究・開発分野で2位を維持したものの、経済・ビジネス分野の「経常収支比率の低さ」など財政基盤に課題を残した。
東京23区、港区が2年連続で首位 文化・交流に強み
東京23区は国内136都市とは別に集計した。24年に初の首位となった港区が2年連続でトップだった。千代田区が僅差で2位、中央区が3位で続いた。港区は文化・交流分野が強く「行楽・観光目的の訪問の多さ」と「国際会議・展示会開催件数」が順位を上げた。

2位の千代田区は経済・ビジネス分野の「新規不動産業用建築物供給面積」の指標が改善し、都市開発の活発さを反映した。生活・居住分野でも「居住環境の満足度」などでスコアを伸ばした。「行楽・観光目的の訪問」でも引き続き高評価を得た。3位は生活・居住分野で首位だった中央区、研究・開発分野が強い文京区が4位に入った。
市川氏は「港区と千代田区は経済・ビジネス分野で競い合い、中央区は銀座を中心に商業が強い。大学が集積する文京区は研究・開発分野が強い。それぞれの街が違う特徴を持ちながら競い合うのが東京の強さだ」と指摘する。
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