
森ビル系のシンクタンク、森記念財団都市戦略研究所(東京・港)は2日、経済や住みやすさなど都市を多角的に分析した「日本の都市特性評価」の2025年版を発表した。東京23区を除く全国主要136都市のランキングで、信越からは長野県松本市(12位)、長野市(17位)、新潟市(36位)が上位に入った。暮らしやすさや交通利便性が高い一方、商業施設の閉店や公共交通の運転士不足といった課題に直面している。
調査は都市の経済活動や居住環境を統計などから評価、分析し、「研究・開発」「文化・交流」「交通・アクセス」など6分野でスコアを算出して順位を付けた。136都市は政令指定都市のほか、県庁所在地や人口17万人以上の都市で、長野県では長野と松本、新潟県では新潟、長岡、上越の計5市が対象となった。

松本市の合計スコアは24年から低下したが、順位は横ばいだった。18年の調査開始時から、信越の中で最上位を維持している。
6分野のうち、住みやすさを示す「生活・居住」分野は136都市中7位(24年は16位)と、高評価となった。同分野では21年に3位、23年は1位となるなど、上位に入ってきた。要因としては居住者へのアンケートをもとにした「居住環境の満足度」が高評価だったことや、待機児童解消など行政の取り組みも影響した。25年も医師の多さや平均寿命・健康寿命の高さが追い風になり、スコアを伸ばした。
住みやすさで評価が高いこともあり、松本駅周辺では5月に徒歩約8分の場所で全127戸のマンションが竣工。さらに28年1月には徒歩約5分の場所に全273戸のマンションが竣工予定と、住宅供給は引き続き旺盛だ。

一方で、ともに中心市街地にあった「松本パルコ」と「井上百貨店本店」が25年前半に閉店し、跡地利用もまだ不透明な部分がある。生活利便性や雇用といった部分に不安がでる可能性がある。
長野市は18年の調査開始から合計スコアで20位前後をキープしており、25年は24年の20位から3つ順位を上げて17位となった。分野別では「生活・居住」が24年の36位から17位へ、自然環境の満足度や気候、環境配慮の取り組みなどが指標の「環境」は22位から11位へ、いずれも大きく順位を上げた。
「生活・居住」分野の個別指標で平均寿命・健康寿命がトップであることに加え、行政による住民サービスの電子化度合いや物価水準の低さなどの指標でもスコアが高かった。「環境」分野では夏の涼しさや、居住者アンケートによる快適性への満足度、資源のリサイクル率などのスコアが高い。
新潟市の合計スコアは36位と、24年の35位から1つ順位を下げた。論文投稿数やグローバルニッチトップ企業数を指標にした「研究・開発」が136都市中16位(24年は16位)、交通の利便性などの「交通・アクセス」が同20位(24年は17位)と、信越の中で最も高かった。

「交通・アクセス」分野では新潟駅の駅ビルや駅前広場の整備などにより、さらなる評価向上が期待される。ただ、バス運転士不足などが深刻化する中、官民が連携して住民の足を確保していくことが課題となる。
(臼井優衣)
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