
富士通は3日、通信機器向けの基本ソフト(OS)を手掛ける米新興企業、アーカス(カリフォルニア州サンノゼ)に約100億円を出資したと明らかにした。同社はルーターなど通信機器向けに入れる汎用のOSを開発する。データセンターなどに使う機器は通常メーカーごとにOSが異なるのを、同じOSにより一括で運用できる効率化につながる。
富士通は同日、通信関連子会社の1FINITY(ワンフィニティ、川崎市)とアーカスとの提携を発表した。提携説明会で富士通側が出資したことを明らかにした。比率は明らかにしていないが少額出資とみられる。
アーカスが手掛けるのは「ネットワークOS」と呼ばれる技術。ルーターや通信の効率を高める「ネットワークスイッチ」といった通信機器で搭載される。これまでは各メーカーが独自のOSを組み込むことが多かったが、アーカスのOSは台湾メーカーなどが手掛ける汎用機器に搭載できるのが特徴だ。
データセンターや高速通信規格「5G」の基幹通信網、企業内のネットワーク端末などあらゆる環境で利用でき、それぞれで設置する機器を同じOSで一括管理できる。利用企業は運用コストを削減できる。選ぶ機器の制約が少なく柔軟に通信インフラを構築できる利点がある。
ワンフィニティはアーカスからOSの国内独占販売権を取得した。光伝送装置や携帯通信基地局などネットワーク向けの機器やソフトウエアを展開しているが、新たにネットワークOSもラインアップに加える。
富士通は生成AI(人工知能)の基盤となる「大規模言語モデル(LLM)」から次世代のスーパーコンピューターまで、ハードとソフトの両面でAIを手掛ける。ワンフィニティ社長で富士通の執行役員専務も務める森林正彰氏は、「ネットワークは富士通がAIの(すべてに関わる)垂直統合的なモデルの戦略を進めるにあたっても重要だ」と話した。今回の提携を機に、この分野でもAI関連技術の幅を広げる。
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