ASBJはのれんの会計処理を巡り様々な関係者から意見を聞いている

企業会計基準委員会(ASBJ)は3日、M&A(合併・買収)で生じる「のれん」の会計処理について関係者から意見を聞く公聴会を開いた。財務諸表を使う投資家からは、のれんを規則的に費用化する定期償却ルールがある日本企業は、株価が割安に評価されやすいと指摘する声が聞かれた。

のれんは買収額と買収先の時価純資産の差額。日本の会計基準では定期償却と価値が大きく減った場合の減損損失の2つで会計処理する。国際会計基準(IFRS)や米国会計基準は定期償却をせず減損のみで処理する。

減損のみのやり方では、損失計上の額やタイミングで経営者による恣意性が入りやすいとの指摘があった。一方、日本プライベート・エクイティ協会の飯沼良介会長は「定期償却も償却期間を会計士との交渉で決める点で恣意性がある」とし、M&A促進のため、のれんを非償却としIFRSと同等の厳格な減損テスト実施を求めた。

日本基準の企業は償却期間が終わるまで割安な評価が続きやすいとの見方もあった。りそなアセットマネジメントの井浦広樹チーフ・ファンド・マネージャーは、割安さの解消を見込んで投資しようにも「他の投資家がついてこないと多数決の論理で負ける。(投資の)様子見やディスカウントをせざるを得ない」と語った。

ASBJは企業関係者からも意見を聞いた。「のれん償却があるためにM&Aを中止した事例がある」(ソラコム)との声があった。のれんを償却しないIFRSへの移行は「企業規模や人材の観点から難しい」(スギホールディングス)という。

複数の民間団体などが5月、ASBJの運営母体である財務会計基準機構(FASF)に対し、のれんの会計ルールの見直しを提案した。のれんの償却か非償却かの選択制導入が柱となる。償却ルールは利益を押し下げるためM&Aの阻害要因になっているとの問題意識がある。

FASFは7月、幅広い関係者から意見を聞き取ると決めた。ASBJが開いた公聴会は9月3日が2回目。8月開催の1回目では学術関係者が意見を述べた。

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