子どものスマートフォン長時間利用への懸念が強まっている

スマートフォンなどのデジタル機器やサービスとどう向き合うべきか。愛知県豊明市が議会に提出した条例案が議論を呼んでいる。子どもの長時間利用などに対する懸念が広がるなか、社会的な議論を深める契機とすべきだ。

同市は条例案に、仕事や学習など以外でのスマホの利用を1日2時間以内にとどめ、小学生は利用を午後9時、中学生は午後10時までとすることなどを盛り込んだ。いずれも目安で義務とはせず、罰則も設けない理念条例となる。

デジタル機器やサービスの利用に関するルール整備は欧州などで先行し、学校への持ち込みを禁じるといった動きが出ている。オーストラリアでは16歳未満のSNS利用を禁止し、事業者に罰金を科す法律を年内に施行する。

各地で規制が増えているのは、デジタル機器やサービスの長時間利用が子どもの心身の健康を害し、学力低下につながるといった不安が広がっているためだ。

一方で規制には課題がある。実効性の担保に加え、個人の権利保護との両立も焦点といえる。豊明市にも「自由を奪うのか」といった意見が寄せられており、丁寧な対応が求められる。

こうした問題を自治体に委ねることの是非もある。そもそも日本では欧米に比べてスマホの長時間利用の影響に関する研究が少ない。国が主体となって科学的な知見を深め、対策の起点とすべきだ。

デジタル機器やサービスは社会の基盤となり、生成AI(人工知能)の発達で拍車がかかっている。的外れな規制で子どもから活用能力を高める機会を奪わないためにも、保護者や子どもを含む社会全体で規制と利用の適切なバランスを探りたい。

事業者の協力も欠かせない。各社は問題を受けて対策を小出しにするといった姿勢を改め、社会のニーズを先取りして動く必要がある。保護者が製品・サービスの利用状況を監視するペアレンタルコントロール機能の改善など自主的にできることも多いはずだ。

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