千葉県で撤退する洋上風力事業の法定協議会に出席した三菱商事の岡藤裕治・常務執行役員㊨(8日、千葉市)

三菱商事と中部電力が千葉県銚子市沖で洋上風力発電所の建設事業から撤退することを受けて、資源エネルギー庁などは8日、同事業の法定協議会を千葉市内で開いた。同庁省エネルギー・新エネルギー部の小林大和部長は閉会後、記者団に「制度の見直しを含めた事業環境の整備について年内をめどに一定の整理を示したい」と述べた。

協議会は千葉県や国土交通省のほか、同県や銚子市の漁業協同組合の幹部、エネルギーの専門家らが参加した。まず、三菱商事で電力事業の責任者を務める岡藤裕治・常務執行役員が事業撤退を謝罪し、コスト増加などの要因を説明した。その後、出席者から迅速で適切な再公募を求める声などが上がった。

千葉の事業について、国の審議会は今後、撤退の要因を分析し、事業環境整備の検討も進める。事業を引き継ぐ企業を決める再公募の時期について、小林部長は「再公募は法定協議会を通じて地元の関係者の合意形成が必要で、スケジュールは未定だ」と語った。資源エネルギー庁は、三菱商事が撤退する秋田県にある2件の洋上風力でも同様の方針を表明ずみだ。

三菱商事は3事業で蓄積した開発データを提供する意向を示している。同社の岡藤氏は記者団に「データを再公募に向けて提供するのか、再公募で決まった事業者に引き継ぐのか、詳細は経済産業省と相談したい」と説明。「不公平があってはならず、透明性を持って対応したい」と語った。

政府の公募ルールで三菱商事連合が積み立てていた約200億円の保証金は国に帰属し、結果的に没収となる。銚子市の越川信一市長は「(洋上風力に関連して)先行投資をした地元企業では損害が発生している。200億円を補償などに活用してほしい」と要望した。

資源エネルギー庁の担当者は「没収された保証金は国庫に納付することが公募の指針に明記されている。対応は難しいが、何ができるか考えたい」と答えた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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