社内調査の結果を受けて陳謝する日本生命保険の赤堀直樹副社長(中央)=東京都内で2025年9月12日午後3時半過ぎ、山口智撮影

 日本生命保険の出向者が出向先の情報を不正に持ち出した問題で同社が12日、社内調査結果を明らかにした。日生は出向社員が自社への貢献意欲から「自らのミッションの一つ」と認識した上で不正に及んでいたと説明した。会社としての組織的な関与は認めなかったが、組織の情報管理体制の甘さを露呈する格好となった。

 日生によると、出向社員は私用のスマートフォンの無料通信アプリ「LINE(ライン)」や郵送などで本社の銀行窓口販売部門の担当者に情報を送信。所属する金融法人部門の役員にも広く共有していた。本社で情報を受け取った社員も不正な持ち出しと認識していた。こうした状況が生じた背景として「倫理観の教育が不足していたこと」などを挙げた。

 赤堀直樹副社長はこの日の記者会見で「担当者も自らの評価につながることを期待していた。リスクに対するさまざまな想像力が足りず、これまで築き上げてきた信頼関係を一気に損ねた」と語り、陳謝した。

 調査対象期間は金融機関への出向を開始した2019年4月以降だが、それ以前についても「(不正持ち出しが)発生した可能性は否定できない」とした。

 一方、今回の事案発覚後、同社営業部門の端末で内部情報の入ったフォルダーが削除されていたことがわかった。データは復元されたが、同社は削除行為への組織的な指示を否定した上で「証拠隠滅の意図はなかった」と弁解した。

 同社は営業目的での出向を来年4月をめどに取りやめるほか、再発防止策に向けた委員会組織を設置する。関係者の処分は検討中としている。金融庁は日生から受けた報告を踏まえ、業務改善命令など行政処分の必要性を慎重に見極める方針だ。

 保険業界では代理店への出向者が顧客情報を漏らす不祥事が続出し、日生を含め生保各社が既に関連調査を進めたが、今回の事案は把握できなかった。今後は他の生保でも同様の事案がなかったか、調査に乗り出すかどうかが注視される。【山口智】

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