社内調査の結果を受けて陳謝する日本生命保険の赤堀直樹副社長(中央)=東京都内で2025年9月12日午後3時半過ぎ、山口智撮影

 日本生命保険から三菱UFJ銀行への出向者が同行の内部資料を不正に持ち出していた問題で、日生は12日、銀行や販売代理店などに出向した複数の社員が無断で情報を持ち出す事例が、2019年からの6年間で604件確認されたと発表した。組織的な関与は否定しつつも、自社の保険の営業活動を推進するために長期間、不正行為が続いていたことがわかった。

 日生によると、情報を不正に持ち出した社員は銀行など七つの保険販売代理店に出向していた金融法人部の計13人。調査対象の出向者の1割に該当する。部内や担当役員ら約270人に共有されていた情報もあった。日生は持ち出し先の具体的な代理店名は明らかにしていない。

 この日開いた記者会見で、日生は一連の不正持ち出しの組織的関与を否定。ただ、宮嶌隆浩常務は「明示的な指示はなかったが、複数の職員が関与しており、個人の問題ではなく、組織に課題がある」と述べた。また、不正競争防止法が禁じる「営業秘密の侵害」にあたるかどうかについて「趣旨に照らして適切ではなかった」としている。

 日生は7月、三菱UFJ銀に出向した社員が同行の保険商品の販売戦略などの内部情報を無断で持ち出したと明らかにした。情報は「社外秘」と認識しながら、日生内部では公然と広く共有されていた。金融庁は同月、日生に報告徴求命令を出した。

 無断で持ち出した情報は、代理店内の保険販売業績に関する情報や、同行が把握していた他の生命保険会社の商品情報など。日生内部では「逆流厳禁」という注意書きとともに営業活動に利用していた。【山口智】

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