
渋谷工業は13日、2026年6月期の連結純利益が前期比8%減の93億円になりそうだと発表した。主力の飲料充塡機に組み込む自社装置の割合が下がり、利益率が落ちる。米国の関税政策などでアジアを中心に顧客の設備投資が先送りされたことも影響する。27年6月期が最終年度の中期経営計画は投資意欲の回復を織り込み、修正しなかった。
売上高は3%増の1330億円、営業利益は5%減の130億円と見込む。24年に発表した中計はそれぞれ1380億円、140億円と想定していた。飲料充塡機で容器の供給機やケース詰めといった周辺装置に他社製の機械を仕入れるため、利益率が下がる。素材やエネルギー価格の上昇のほか、人件費や人手不足対策のデジタル化でコストがかさむ。
顧客が設備投資を先送りしていることも中計の目標数値に届かない一因だ。渋谷英利社長は同日の記者会見で「ここ半年で設備投資を延期するケースがアジアの顧客を中心に出てきた」と語った。米トランプ関税、中東情勢などに起因する世界経済の不透明性が顧客の設備投資動向に影響を与えたと説明した。
同社にとってトランプ関税は米国輸出分に課される直接的な影響、顧客の設備投資意欲に与える間接的な影響の2つに分かれる。
米国への輸出は飲料充塡機を含むパッケージングプラント事業が中心で、売上高は全体の1割程度だ。飲料充塡機の税率は第2次トランプ政権発足前はゼロだったが、今回15%となる。宮前和浩常務執行役員は「上昇分は顧客に負担してもらう」と価格転嫁で対応する方針を示した。

価格転嫁の成否に加え、間接的な影響に当たる顧客の設備投資意欲が回復するかが今後の業績を左右する。渋谷社長は「米国関税の税率が決まり、不透明性は和らいだ」と述べた。中計最終年度の27年6月期に売上高を1500億円、営業利益は160億円とする目標は維持する。

26年6月期は主力の飲料充塡機は減収見通しだが、薬品用プラントは伸びると想定する。半導体製造装置などメカトロシステム事業も国内とアジアを中心にAI(人工知能)普及に伴うデータセンター向け投資の拡大を見据え、売上高の増加を見込む。
飲料充塡機や人工透析装置の生産能力を増強するため、約175億円を投じて27年までに石川県内に計4工場を建てる。すでに2工場で着工し、24年に発表した当初計画で示した完成時期や投資額の変更は今のところないという。
同日発表した25年6月期の連結決算は売上高が前の期に比べて12%増の1290億円、純利益が3%増の100億円だった。いずれも過去最高となった。渋谷社長は25年6月期は順調だったと振り返り「今後も顧客のニーズを拾い上げ、受注につなげていきたい」と語った。
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