
【ベルリン=南毅郎】スイス国立銀行(中央銀行)は25日、政策金利をゼロ%で据え置くと発表した。物価上昇率が目標の2%未満で推移する見通しで、金利の維持が適切と判断した。市場ではマイナス金利の導入観測が後退するものの「必要に応じて金融政策を調整する」との説明は維持した。
政策金利の据え置きは事前の市場予想通りだった。前回6月の会合では0.25%の利下げを決め、欧米の主要中銀では約3年ぶりにゼロ金利にした。政策金利の水準としては日銀の0.5%を下回り、主要中銀で最も低い。

スイス中銀は25日公表した金融政策報告書で「インフレ圧力は前の四半期と比べてほぼ変わっていない」と説明した。今後については「物価の安定に向け、必要に応じて金融政策を調整する」と明記した。
スイスでは8月の消費者物価指数が前年同月比0.2%上昇した。5月には0.1%の下落に転じていたものの、6月以降は小幅に上昇を維持している。スイス中銀は物価の安定目標を2%未満の上昇率と定めており、ひとまず大幅なデフレ圧力は回避している。
永世中立国のスイスでは、トランプ政権で揺れる米国市場から逃避したマネーが流入してきた。外国為替市場では通貨が値上がりし、足元では1ドル=0.79スイスフラン台と年初の0.91スイスフラン台から大幅に上昇している。

報告書では「外為市場で積極的に行動する用意がある」と必要に応じて為替介入を進める方針を示した。物価見通しは6月時点から変えず、物価上昇率が2026年は0.5%、27年は0.7%で推移する予測を維持した。米国の高関税政策を背景に「スイス経済の見通しは不透明だ」とした。
スイス中銀のシュレーゲル総裁は6月、日本経済新聞とのインタビューでマイナス金利政策を導入する「ハードルが高まった」と述べていた。「預金者や年金、不動産市場で大きな課題や副作用をもたらす」としており、その後もマーティン副総裁が8月に慎重な姿勢を重ねて示した。
スイス中銀は14年12月にマイナス金利政策の導入を決め、15年1月から適用を始めた。その後は8年近くにわたり継続し、ウクライナ危機に伴う物価高で22年9月に打ち切っている。金利先物市場では当面もマイナス金利政策の再導入を見送るとの見方が優勢だ。
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