
ネパールで若者主体の大規模な反政府デモが起き、オリ政権が崩壊した。暫定首相に就いたカルキ元最高裁判所長官は下院を解散し、来年3月に総選挙を行う。
同国は内戦を経て2008年に王制を廃止し、共和制に移行した。だが主要政党が権力闘争に明け暮れ、貧困や腐敗が一向に改善しない状況に、国民の不満がたまっていた。汚職への厳しい姿勢で知られるカルキ氏のもと、国政を早急に立て直してほしい。
デモのきっかけは9月上旬、主要なSNS運営各社が偽情報対策に必要な登録手続きを怠ったとして、政府がフェイスブックやユーチューブなどを禁止したことだ。政治家に対する特権批判を封じ込める狙いがあったとみられる。
人口3千万人の半数が25歳未満と若いネパールは、1人あたり国内総生産(GDP)が1400ドル程度と、アジアで最低の水準だ。失業率が高止まりするなか、自ら零細事業を営んだり、国外へ出稼ぎに出たりする若者が多い。連絡や情報収集に不可欠なSNSを遮断され、怒りが爆発した。
首相退陣を求めるデモは過激化し、私邸や国会議事堂などが放火された。警察との衝突で70人を超す死者が出るなか、オリ氏は辞任に追い込まれ、軍が事態収拾に乗り出した。デモ隊の要求を受け入れる形で、女性初の最高裁長官として国民の尊敬を集めるカルキ氏が暫定首相に任命された。
南アジアでは22年にスリランカ、24年にはバングラデシュでも若者が中心となった暴動が起き、政権が崩壊した。共通するのは強権統治や腐敗への閉塞感に、経済失政が重なったことだ。
若年層に就業機会がなければ、国の発展はおぼつかない。政情安定と経済改革に向けて、カルキ氏には来たる総選挙を自由・公正に実施することを求める。
かつてのネパール王室と皇室が親しい関係にあった日本は、来年に同国と国交70年を迎える。インドと中国に挟まれ、地政学的に重要な国の発展を手助けしたい。
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