
トランプ米大統領がパレスチナ自治区ガザの恒久停戦や戦後統治の計画を示し、イスラエルのネタニヤフ首相が同意した。これを基にイスラム組織ハマスと速やかに合意を探る必要がある。戦闘を終わらせる好機を逃すべきでない。
停戦を渋ってきたネタニヤフ氏に、トランプ氏が首脳会談で同意を迫ったのは前進だ。従来も和平を求めては失敗してきたが、周到に20項目の計画を用意した。
即時停戦と人質全員の解放を定めた。戦後のガザ統治にハマスを関与させず、イスラエルはガザを占領、併合しないとした。統治を監視する組織を設け、ブレア元英首相らも加わるという。
ガザからの退去を住民に強制しないとも記した。トランプ氏は2月、ガザを米国が所有し住民を域外移住させてリゾート開発するとしていた。撤回は当然だ。
イスラム圏や欧州の諸国、日本などが計画を歓迎した。トランプ氏は国連総会の機にアラブ諸国などと首脳会議を開いており、事前調整を評価したい。
ただ計画は総じてイスラエルに都合がよい。同国軍のガザ撤退の時間軸は曖昧だ。武装解除などハマスが受け入れがたい点がある。パレスチナ国家樹立を明記せず「2国家解決」への道筋を示さないのも問題だ。
イスラエル側には、閣内の強硬な極右勢力に停戦を納得させる課題がある。簡単でないが、双方とも時間稼ぎや抜け穴探しに時間を費やしてはならない。
ネタニヤフ氏は、アラブ諸国が米国の計画に賛同し、ハマスを孤立させたと強調した。自らも、英仏などのパレスチナ国家承認で国際的孤立が深まる。ノーベル平和賞を望むトランプ氏が急ぐガザ和平の案とあっては、受けるほかなかったのが実情だろう。
米国が圧力を強める今こそ、ガザの惨状を終わらせるときだ。近く2年になる戦闘で、ガザの死者は6万6千人を超えている。国際社会も、恒久停戦の働きかけを新たにする必要がある。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。