
人工知能(AI)関連を筆頭に中国テック企業の躍進が連日、報じられています。一方、深刻な不動産不況を背景に、マクロでみた中国経済は苦境から脱する兆しがありません。ミクロとマクロで中国経済の見た目がこれほど違ってくるのはなぜでしょうか。
経済産業研究所の呉軍華コンサルティングフェローはラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演し「中国経済の『ソ連化』が続いている」のが原因の一つであるとの見方を示しました。
「ソ連化」とは何を意味するのでしょうか。呉氏によると、それは中国共産党、あるいは最高指導者である習近平(シー・ジンピン)国家主席の意思で、特定の産業分野にカネや人材といった資源を集中的に投入できる仕組みです。
習政権はいま「新質生産力」をスローガンに掲げ、AIや電気自動車(EV)、リチウムイオン電池といった産業分野を世界最先端の水準に引き上げようと、あの手この手で支援しています。その結果、特定の産業では中国企業が世界市場を席巻するほどの競争力をつけました。
しかし、習政権が集中的に支援しているこれらの産業分野は「まだ国内総生産(GDP)の1割に満たない」というのが呉氏の見方です。雇用を含め、経済全体への波及効果は決して大きくありません。
中国経済が低迷から抜け出せない最大の理由は需要不足にあります。それなのに、習政権は先端産業の育成といった供給サイドの改革にばかり力を入れているようにみえます。中国経済がミクロで活気づく一方、マクロでは低迷が続いている理由の一端はこのあたりにありそうです。
呉氏の解説は以下のポッドキャストでお聴きいただけます。
「NIKKEIで深読み 中国経済の真相」番組サイトはこちら
詳しい内容は「note(ノート)」でもお読みいただけます。
https://note.com/cnshinsou/n/n4fd91174be7c?sub_rt=share_pw
(編集委員 高橋哲史)
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