
【ニューヨーク=西邨紘子】トランプ米政権は2日までに一部の米大学に対し、政権の要求に従うことで助成金などを優遇的に受けられる協定を持ちかけた。複数の米メディアが関係者の話として報じた。大学への影響力を強める施策の一環とみられる。
報道によると、入学審査や教職員の雇用で人種や性別の考慮を禁じるといった反DEI(多様性、公平性、包摂性)施策の徹底を求める。さらに、大学内で保守的な思想や発言を保護するほか、授業料の5年間凍結や留学生の受け入れの制限も要求する。
提案を受け取ったのはマサチューセッツ工科大(MIT)、ブラウン大、ペンシルベニア大、ダートマス大、ヴァンダービルド大、テキサス大オースティン校、アリゾナ大、バージニア大、南カリフォルニア大の公立・私立9校。提案を受け入れるかは不明だ。
トランプ政権関係者は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、大学が提案を受け入れた場合、助成金の受け取りや政府関係者へのアクセスで優先的な扱いを受けられる可能性があると話した。
トランプ政権は米国の大学教育を「リベラルに偏向している」と問題視する。これまで政権が推進する反DEI施策の受け入れを求め、助成金差し止めや留学生の受け入れ停止などで圧力をかけている。
9大学がどのように選ばれたのかは不明だ。ブラウン大とペンシルベニア大は既にトランプ政権と助成再開で合意した。バージニア大では6月、DEI施策を批判された前学長が政権の圧力を受けて辞任した。
テキサス大学評議員会のケビン・エルティフ会長は声明で、同大オースティン校が提案を受け取ったことを認め「全米のわずか9校に選ばれたことを光栄に思っている。大学関係者と早急に提案を検討する」と述べた。
米大学1500校の学長が加盟するアメリカ教育評議会のテッド・ミッチェル会長は、トランプ政権が提示した協定の内容を問題視する。大学内での議論や発言内容の善しあしを政府が判断することになり「言論の自由への影響は恐ろしいものだ」と懸念を示した。
【関連記事】
- ・米大学、トランプ政権と「取引」相次ぐ 助成金再開へ監視受け入れ
- ・ハーバード大学「和解」に反対運動 学長の辞任呼びかけも
- ・米名門大学長、トランプ政権の圧力で辞任 助成金引き換えに解任要求か
- ・トランプ氏、ハーバード大学との和解「近い」 解決金は730億円か
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。