
中国当局が20日に発表した7〜9月の国内総生産(GDP)は実質で前年同期に比べ4.8%増となり、成長率は4四半期ぶりに5%を割り込みました。深刻な不動産不況を背景に需要が不足しており、中国経済は苦境から抜け出せずにいます。
なかでも不振が目立つのが、GDPの4割を占める消費です。習近平(シー・ジンピン)政権は5月に「倹約令」を改定し、公務員らが接待の会食で高級料理や酒、たばこを提供するのを禁じました。宴会そのものを自粛する空気が中国全土に広がり、消費を大きく落ち込ませる要因になっているといわれています。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングの小林暢子EYパルテノン パートナーはラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「NIKKEIで深読み 中国経済の真相」に出演し、倹約令の影響が「広範囲に広がっているのは確かだ」としたうえで、仮に倹約令がなくても中国の消費は構造的な要因で減少が続くとの見方を示しました。
そもそも中国では、景気の低迷で失業率が上がっており、実質賃金が上向いていません。こうした状況下で、小林氏は「同じものを得るのであればよりお得な(安い)ものを買おうという傾向」が一段と強まっているとみています。かつて日本が経験したようなデフレスパイラルに似た状況であり、これでは消費が増えません。
中国共産党は23日に閉幕した第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)で、2026年から始まる5カ年計画の中身を議論しました。しかし、中国経済の構造問題に切り込む施策が出てくる兆しはありません。
放っておけば消費はますます落ち込むのに、倹約令の強化でさらに拍車をかける。習政権の政策はどこかちぐはぐな印象をぬぐえません。
小林氏の解説は以下のポッドキャストでお聴きいただけます。
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(編集委員 高橋哲史)
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