シーインのロゴと同社のウェブサイト(11月5日)=ロイター

【パリ=北松円香】フランス政府は5日、ルコルニュ首相が中国発衣料品ネット通販「SHEIN(シーイン)」のウェブサイト停止を指示したと発表した。検察がサイトのラブドール販売について児童ポルノの疑いで捜査を始め、さらに武器の販売も判明したためだ。違法な疑いのある販売が相次ぐ事態を重くみて是正を促す。

違法の刃物やメリケンサックを販売

「事態は一線を超えた。ファストファッションではなくファスト犯罪だ」。中道右派の共和党のベルモレルマルケス議員は5日に議会で、シーインを検察に通報したと述べた。

同議員が問題視するのはシーインのサイトで売られている「ゾンビナイフ」と呼ばれる両刃の刃物や、拳にはめて殴打の威力を強めるメリケンサックだ。

どちらもフランスでは「カテゴリーA」と呼ばれる分類の武器で、特別の許可がない限り購入や所有が禁止されている。同カテゴリーには大量に連続発砲できる銃や、大砲や地雷のような戦争で使用する武器も含まれる。

シーインは幼い見た目のラブドールの販売が児童ポルノに当たる疑いがあるとして、パリ検察が今週から捜査に乗り出したところだった。フランスでは児童ポルノの拡散や所有は違法だ。最近では日本サッカー協会(JFA)幹部が航空機内で児童ポルノを閲覧していたとして有罪判決を受けるなど対応は厳しい。

シーインに対してもオンライン上の野放図な販売が子どもを危険にさらすとの反感が急激に強まっている。「小児性犯罪者たちはこうした人形で練習するのだ」(エルアイリ仏児童担当高等弁務官)として、ラブドール購入者も捜査すべきだとの声もある。

停止に向けた手続きを開始

仏政府はサイト停止に向けて2種類の手続きを並行して進める方針だ。1つ目はレスキュール経済・財務相が中心となり、まずシーインにカテゴリーAの武器販売の中止を命じる。48時間以内に完全に中止されなければフランス向けのサイト停止を指示する。

一方、ヌニェズ内相は司法当局にシーインのサイトの停止を要請した。同サイトで違法行為が繰り返されており、公共秩序への重大な被害を確実に止めるべきだと指摘した。

仏政府は欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会に対して、シーインの調査も要請したという。

欧州委員会はシーインについて「デジタルサービス法(DSA)」に基づき、海賊版の商品など違法商品の販売対策について調べている。少額の輸入品への手数料も検討するなど締め付けを強める。加盟国レベルでも同社への規制が強化されれば、欧州での事業展開はさらに難しくなる恐れがある。

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